6年間の「出口」を見据えたカリキュラム改革
「AIの発達やグローバル化が進む中で、そうした時代に対応した教育が求められるのは当たり前のこと。言葉だけでなく、実績として示していきたいと思います」
そう語るのは、2015年度から同校の校長を務める畠山武先生。着任以来、さまざまな側面から改革に取り組んできた。その一つが、6年間の「出口」である大学入試を見据えたカリキュラム改革。「文系」「理系」はもちろん、「国公立大」「難関私大」など、生徒たち一人一人が目標に沿って学力を高めていけるように改変した。高校では「R・Sシステム」と呼ばれる習熟度別授業を実施したり、放課後や休業期間中の講座を開いたりといった形で、強力な支援体制も整えている。
グローバル人材の育成を目指す「MGSクラス」
改革における目玉の一つは、2016年度に設置した「MGS(Meisei Global Science)クラス」だ。最難関の国公立大・私大の合格を目指すクラスで、主要教科の強化を中心にハイレベルな学習プログラムが組まれている。「本校には、建学の精神として『和の精神のもと、世界に貢献する人を育成する』がありますが、これからは『貢献する』だけでなく、『リーダーとして活躍する』人材を育てていきたいと思います」と、校長の畠山先生は期待を寄せる。
そうした資質を育む実践の一つが、希望者を対象として高1の3月に行われる「ボストン・リーダーシッププログラム」だ。アメリカのハーバード大学やマサチューセッツ工科大学を訪れ、現地の学生と交流しながら世界の最先端教育や環境に触れる。「参加した生徒の多くは、現地の大学生が真剣に学ぶ姿勢に感銘を受け、『考え方や意識が変わった』と言って帰ってきます」と校長の畠山先生は目を細める。
中高一貫校の強みを生かした英語教育プログラム
グローバル人材の育成に向けて核となる英語教育については、中高一貫校の強みを生かした体系的なプログラムが組まれている。
英語の授業では、入学直後から「多読多聴」を通して英語のシャワーを浴び、語彙力やリスニング力を高める。中1は、英語漬けの4日間を過ごす「イングリッシュキャンプ」に参加。外国人教師との対話などを通じ、英語を使ってコミュニケーションすることの楽しさを実感する。
そうした学習・経験をベースに、中2では「ヤングアメリカンズ」に参加する。アメリカ人のダンサーやシンガーと共に、英語でのミュージカルを作り上げる3日間のプログラムで、生徒たちは英語の「聞く」「話す」力を磨くとともに、表現力も養う。「最終日の発表会を見た保護者の中には、スポットライトを浴びながら英語で堂々と演じる我が子の姿に感動して、涙を流す人もいます」(校長の畠山先生)
さらに中3の11月には、フィリピン・セブ島での語学留学を実施する。期間は1カ月。全員が参加する中学生の語学留学としては異例の長さだ。留学前の半年間は、毎週金曜日に25分間、セブ島にいる講師とマンツーマンでオンライン英会話講座も受ける。
「私学の中高一貫校として、全生徒の英語力をある一定ラインで高める責務を負っていると考えています。本校では、そのラインを『英検2級』と設定しています」(校長の畠山先生)
中3以上は全生徒にタブレット端末を貸与
同校では、中3以上の全生徒に1人1台のタブレット端末を貸与している。狙いは、生徒たちのICT活用力を伸ばすとともに、授業の「アクティブ・ラーニング化」を図ること。生徒たちが端末を使って調べ、発表し、互いに学び合う活動が、幅広い教科で行われている。教室には電子黒板も完備しており、特定の生徒の端末画面をスクリーンに表示し、クラス全員に共有することも可能だ。「もはや、教師が黒板とチョークを使って一方的に授業するような時代ではありません」と、校長の畠山先生は言う。
タブレット端末の活用は、授業だけにとどまらない。生徒たちは、日々の学習内容・学習時間などを端末から入力。その記録はデータベースとして可視化され、学習の見通しを立てる際の参考にするなどして、自己管理能力を高めている。端末は自宅に持ち帰れるため、先生から出された宿題をしたり、相談事を送ったりすることも可能だ。
こうした教育実践の数々を通じ、着実に大学合格実績を伸ばしている同校。「MGSクラス」の1期生が卒業する2019年3月には、さらなる飛躍が期待される。