WILLナビDUALアーカイブ 私立中高一貫校

「生徒と共に」を実現した
創立130周年記念演奏会

豊島岡女子学園中学校・高等学校

都内有数の女子進学校として知られる豊島岡女子学園中学校・高等学校が、2022年5月1日、創立130周年を迎えた。その記念演奏会は、プログラムづくりから、当日の司会進行、演奏・舞踊、さらにはオリジナルデザイングッズの制作・販売まで、「生徒と共に」を意識してつくり上げられ、生徒たちの心に残るものになった。ここでは大好評だった記念演奏会の模様をリポートする。

在校生1800名が一堂に会して開催

創立130周年を前に、豊島岡女子学園の卒業生でもある竹鼻志乃校長には、ある強い思いがあった。

「これまでの創立記念式典は、代表生徒のみの参加でしたが、創立130周年は、ぜひとも全校生徒と共に祝いたい。そして、生徒たちが多方面で多様に活躍する『現在の豊島岡』を象徴する式典にするために、生徒一人ひとりが持つ『一能』を互いに讃え合える形をめざしたいと考えたのです」

そこで、4年前から、その実現に向けた計画がスタートした。

では、どのようにして「生徒と共に」を実現するのか。まずは、在校生約1800名が一堂に会して開催するためには、会場の確保が大切になる。中学合唱コンクールの会場として使用している「東京芸術劇場大ホール」しかない。「せっかく大ホールを借りるのなら、演奏会を一緒に行いたい。できれば、オーケストラを編成して、校歌の全体合唱をしたい」と、竹鼻校長の夢も膨らんだ。

豊島岡女子学園は生徒全員がクラブ活動に参加しており、音楽系、舞踊系のクラブも数多い。演奏会の案が伝えられると、さっそく弦楽合奏部、コーラス部、吹奏楽部、琴部、桃李連(阿波踊り)が名乗りを上げた。これを機に、弦楽合奏部、吹奏楽部、コーラス部によって、同校初のコーラスを加えたオーケストラも編成された。

「ちょっと自慢したいのが、クラシックホールでの琴演奏と阿波踊りです。琴の音がホールに響き渡るのか、阿波踊りの演舞の演出をどうするのか、東京芸術劇場のスタッフの方もあまり経験がなく、不安も感じられました。しかも当日のリハーサルは30分だけです。それでも、オーケストラも琴も美しく迫力ある音色をホール全体に響かせ、桃李連も勇ましく美しい演舞を披露してくれました」(130周年担当・渡邉光治先生)

演奏を終えたクラブの代表者も、インタビューで「130周年という記念すべきこの場で、数多くの方々を前に演奏できてうれしく思いました。3階席の上まで音が響くように心がけました。最後の音の響きを聴いたときには感動しました」と、この大きなホールいっぱいの観客の前で、精いっぱい表現できた喜びを語ってくれた。そんな生徒たちの様子が誇らしくも見えた。

演奏会インタビューの様子

演奏会のプログラムづくり、司会進行なども生徒が務める

また、演奏会のプログラムづくり、司会進行なども生徒が務めた。「生徒と共に」を超えて、「生徒の手による」といっても過言ではない演奏会になった。生徒たちにとっても、心に残るものになったことだろう。

実は、プログラムを制作した生徒は、創立130周年記念誌の表紙のデザイン、創立130周年記念ロゴのデザインも手がけている。

「学園の長い歴史の節目に在学し、デザインが公募されたチャンスを光栄に思い、応募することにしました。130年の歴史をどのように描くか。いざデザインを描き始めると、緊張し、悩みましたが、とにかく心をこめて、丁寧に描くことを心がけました。プログラムは、イラストデザインを担当したOさんからデザインが届き、それに文字を入れたのですが、完成したときの喜びは何ものにも代えがたく、一気に実感が湧きました。二人で結束して頑張った成果だと感じています。友人たちがほめてくれたことも、多少の照れくささもありつつ、とてもうれしく、達成感が味わえました」と、納得のいく作品を仕上げた充実感を語ってくれた。

表紙・プログラムデザイナーの二人
左は創立130周年記念誌の表紙とロゴ、右は創立130周年記念演奏会プログラム

「一能」を活かしたオリジナルデザイングッズ

創立130周年で、もうひとつの初めての試みが、生徒の手による「オリジナルデザイングッズ」の制作だ。グッズの選定からデザイン、購入数、販売価格の設定、および販売までを有志生徒33名が担当した。選定されたグッズはペン、メモ、ノート、付箋、クリアファイルなど、13種にのぼった。

デザイナーを務めた生徒たちに話を聞くと、「自分のデザインが記念グッズになる機会はなかなかないから」「入学したばかりだが、新しい環境でも活躍したいと思ったから」「先輩と一緒に何かやってみたいと思ったから」など、参加した理由はさまざまだが、どの生徒からも「何かを成し遂げてみたい」という思いが聞かれた。「意見が割れたり、時間が合わずに会議がなかなか開けなかったり」といった苦労もあったとのことだが、「豊島岡らしさを求めながら、『豊島岡生がほしくなる』『外部の方々からも評価される』グッズを追求していく共同作業は、とても有意義で楽しかった」という思いは、皆に共通しているようである。

完成したグッズは、予想以上の反響で、4月中旬に行われた第1回の販売会では長蛇の列を作り、次々に売り切れが出るほどだった。「友だちが自分のデザインしたグッズを使っているのを見たときは、頑張った甲斐があったと、しみじみ思いました」「デザイナーは個性的で魅力的な人ばかりで、デザインの方向性はそれぞれ違うのですが、その一つひとつに魅力がありました。豊島岡の生徒は、皆が個性的で魅力的で、それを認め、個性を発揮させてくれる学園であることを、この企画を通して、改めて実感しました」といった声が、デザイナーたちから聞かれた。

このように、計画通り、すべての企画で生徒の能力が発揮され、「生徒と共に」祝うことができた創立130周年。学園の歴史と伝統を、未来へとつなげていく機会になったことだろう。

グッズ販売会の様子
一部は完売するほど人気を博したオリジナルデザイングッズ