生徒の進路変更に柔軟に対応できる体制
同校は「自由・自主・自律」の教育理念とともに、いずれのコースでも合唱やアンサンブルを行う中で互いを高め合える「アンサンブルのくにたち」として、多様な人々との協働を大切にしている。「『自由・自主・自律』を校訓にする学校は多いでしょう。しかし、自由には責任を伴うことを、生徒には知っていてほしい」という滝澤副校長。その願い通り、制服がなくても、激しく逸脱する生徒はいないという。
そんな同校が2023年4月、大きな変革を迎えた。中学校では既存の2コースを2023年度から『演奏・創作コース』と『総合表現コース』に改編した。高校では音楽科が『演奏・創作コース』と『総合音楽コース』の2コース制となり、幅広く音楽を学べる環境を整えた。普通科は『特別進学コース』と『総合進学コース』の2コースを有しているが、新たな取り組みとして探究型のゼミの授業を開講した。
「本校を希望する生徒は、音大の附属ということで選んでくれます」と滝澤副校長。ただ、全員が小学生からの思いを貫くわけではない。その受け皿となるのが普通科だ。「高校進学時に進路変更し、音楽に特化した学びをやめる場合、他校を受験し直すのは、受験勉強だけでなく、新たに人間関係を構築する必要もあり、多感な時期にある生徒にとって負担が大きいでしょう」。
音楽の道を目指さなくとも、音楽あふれる環境の中、普通科で学べるメリットは大きい。「本校は音大の附属校ということもあり、普通科でも音楽好きの生徒が集まりますし、音楽関係のイベントも多様です。進路としては国立音楽大学へ推薦で入学することは可能です。しかし、音楽科が2コース制になったので、プロの演奏家ではなく、何らか音楽に関わる仕事に就きたいのであれば、音楽科の『総合音楽コース』で学ぶことをお勧めしています。」
総合型選抜を視野に普通科でゼミをスタート
同校の新たなるスタートの目玉となるのは、普通科が隔週で6日制になることだ。土曜日の2時間を「KUNIONミライ探究」というゼミ活動に充てる。講師は、同校教員でなく、外部のさまざまな業界の第一線で活躍する社会人だ。今年度、講師を務めるのは、音楽療法士、薬学系の大学教員、児童文学の研究者、経営者など10名。テーマを選び、調査を行って最終的に発表する。
2023年1月に完成し、最新設備を整えた生徒たちの新しい学び舎が、地上4階建ての新校舎「2号館」だ。防音や音響に優れた音楽室やレッスン室、スタジオは中学・高校の設備とは思えないほど高性能の設備だ。また、2024年度全面人工芝のグラウンドも完成し、一層学習環境が充実した。 最後に滝澤副校長は、「目的意識をもち、積極的に行動できる人、そして、『なぜだろう?』と疑問をもって考える人に来てほしい」と話す。「本校で、iPadを生徒に貸与し、調べ学習も情報共有もスムーズになっていますが、ぜひ科学技術と共存しながらも、豊かな感受性を育んでほしいと思っています」と受験生にエールを送ってくれた。