モノづくりの基礎力を高める「T-STEAM:Jr」を実施
2015年に「モノづくりプロジェクト」をスタートさせて以来、同校では、企業や大学の専門教員の協力を得て、有志生徒によるチームが車や飛行体などを作り上げ、コンテストでその成果を競い合う取り組みを行ってきた。2018年には男子校も含めた他校のチームも参加するようになり、2021年に「T-STEAM:Pro」に名称を変更。中学には、学年ごとにテーマを設定して全員が参加する「T-STEAM:Jr」が導入された。「今年の『T-STEAM:Pro』では自律走行型ロボットの製作を予定しています。学年の枠を超え、希望者がハイレベルな課題に挑戦する『T-STEAM:Pro』に対し、『T-STEAM:Jr』は中学から基礎的なモノづくりの経験を積み、『Pro』に接続することもできる内容になっています」と話すのは、中2の学年主任の菱沼洋介先生だ。
今回の中1のテーマは、切ったクリアファイルをぐるぐると巻いて、その戻る力を動力源にした「クリアファイルカー」を製作し、スピードと走行距離を競うというもの。一方、中2は「義手を制御せよ」というテーマの下、ストローを指に、工作用紙を腕に見立てた「義手作り」を行った。菱沼先生は「昨年の『T-STEAM:Pro』では、人間の筋肉が動くときに発生する電気信号を拾って制御する“筋電センサー”を使った義手を作成しました。これを中2の2学期の『T-STEAM:Jr.』でもやってみようということになり、その前段階として義手づくりをテーマにしたのです」と語る。
チームで工夫を凝らし自分たちのアイデアを一つの形に
中2の「T-STEAM:Jr」を担当する大上紘子先生は、「毎回、課題はその場で発表されるので、開始前から『今日のテーマは何だろう?』という生徒たちのわくわく感が伝わってきました。合図とともにチームに分かれ、全員が楽しみながら作業に臨んでいました」と当日の生徒の様子を振り返る。1チームのメンバーは4~5名で、ランダムに編成されることが多い。チーム内でアイデアを出し合い、試行錯誤を繰り返して、午前中の約3時間で製作が終了した。教員は作り方を指導しないため、でき上がったのはバラエティに富んだユニークな作品ばかりだ。
午後には各クラスでコンテストが実施され、中2は義手を使ってコップをつかみ、中のスチロール球を別の容器に移動させたり、細いストローを太いストローに差し込んだりするミッションに挑んだ。「競技前には各チームがそれぞれ自分たちの作品をアピールする時間も設けられています。他のチームが工夫した点を聞き、新たな気づきもあったようです」と大上先生。「競技は非常に盛り上がります。自分たちのチームが勝てばうれしいのはもちろんですが、苦戦しているチームに向けて他チームからも『がんばれー!』という声援が上がっていました。この活動を通して生徒同士の親睦が深まり、クラスの雰囲気はとても良くなっています」
「T-STEAM:Jr」は基本的に年2回実施するが、昨年はイレギュラーで3回行われたため、中2にとっては今回が4回目の活動となる。終了後に生徒の感想を聞くと、「メンバーの良いアイデアを取り入れて成功した」「チームで話し合うなかで、新しいアイデアが発見できた」といった声が圧倒的に多かったという。「中1の頃と比べて、製作技術が向上していることに加え、完成までの時間が格段に早まっていて驚きました。周りの意見を取り入れて一つのものを作り上げていく姿が見られ、生徒たちが1年間で大きく成長したと感じます」と2人の先生は口を揃える。
正解のない課題に取り組み 社会で生かせる「志力」を培う
こうした取り組みによって同校がめざすのは、「科学的思考で課題解決できる力」「挑戦する力」「世界で活躍できる力」を身に付けた、「“志力”を持って未来を創る女性」だ。「志力」とは、自らの役割を自覚し、問題解決に向けて主体的に取り組み、実現する力を意味する。
SSH(スーパーサイエンスハイスクール)に指定されている同校では、“志力”を育むために探究的な活動を重視し、中学の希望者による「探究Basic」のほか、高校には全員が取り組む課題探究の時間が設けられている。
菱沼先生は「本校のすべての教育活動によって、内なるエネルギーとして“志力”を蓄え、将来必要となったときにそれを思い切り発揮してもらいたいと考えています」と強調した。大上先生は次のように話す。「試行錯誤しながら答えのないものを模索していく『T-STEAM:Jr』は、高1から本格化する探究学習にもつながっています。今回、他者と協働して何かを作り上げる喜びを体感できたことは、グループ探究の第一歩にもなったのではないでしょうか」
最後に、同校をめざす受験生に向けて、菱沼先生からメッセージが送られた。「本校にはさまざまな学習にチャレンジできる豊富な選択肢があります。入学後には、勉強はゴールではなく手段であることが実感できるでしょう。皆さんがまだ体験したことがないような面白い学びを用意してお待ちしています」