
豊かな能力の源にある「玉川っ子」として身につけた立ち居振る舞い
すべての根幹となる人として大切な深み・丸みを育てるために、「触れて感じて表現する」と「玉川しぐさ」を2つの生活目標として教育活動を進めている玉川学園。
「1つ目の目標"触れて感じて表現する"とは、常にアンテナを立て、五感を使って感じ・考え、そして発表したり、書き留めたり、家で話したりするなど表現すること。これらは知性と品格を磨きます。2つ目の目標"玉川しぐさ"は、気が効いて即行動、相手に恥をかかせない、全体のことを考えて立ち居振る舞いすることで、玉川のモットー"人生の最も苦しい嫌な辛い損な場面を真っ先に微笑を以て担当せよ"に通じます」(中西先生)
これらの目標を実践するために、実に多くの仕掛をもつ玉川学園。中でも突出しているのが同学の「STEAM教育」を支える理科教育専門の校舎「サイテックセンター」や、美術教育専門の校舎「アートセンター」だろう。「本物」を求める所以の施設で、建物がまるごと専用の校舎となっていることが肝だ。アートセンターの一角にある「Art Lab」(アートラボ)では、敷地の間伐材を使って、コンピュータ制御の旋盤やレーザー加工機、3Dプリンターなど本格的な設備による制作活動もできる。

本物、それも一流のものに触れることにこだわるのは、創立以来の信念だ。初めて企画したスキー教室では、やるなら世界一のプレイヤーの指導を受けさせたいと、当時のトップスキーヤーを海外から招聘した。予算はかかっても「教育の日延べはできない」という学園創設者・小原國芳氏の強い思いがあったからだ。
国際教育に関しても、創立当時から留学生の受け入れも積極的に行ってきた。小原氏が世界各地の学校を訪れて交流してきたため、現在は17の提携校をもち、国際交流活動が行われている。
志向に合わせて能力を伸ばせる多彩な環境があるからこそ、科学分野でも生徒の秀でた好奇心を伸ばすことで、連続して指定を受けるのが難しいスーパーサイエンススクールに4期もの間、指定を受け続けている。
こうした取り組みを支えているもう一つの仕掛となるのが玉川大学の存在だ。ワンキャンパスという立地を活かし、大学の設備を使った研究を行うこともできるし、大学の最先端の研究にも触れ、参加することも可能だ。生徒の意欲次第で、あらゆる「本物」に手が届く。「本学の生徒はこのようにやりたいことに次々と触れられ、多くの引き出しを持っています。今は社会の動きが読みにくい時代ですが、たくさんの引き出しを持つことで、自ら新しいことを生み出せるような人を目指してほしいと願っています」(中西先生)
生徒が主体的に活動する「本物」に触れる豊かな研究型の学び
企業や自治体と連携した課題解決型の授業も行ってきた。2023年度は紙カミソリを開発した貝印㈱の特別授業で、紙カミソリのキャッチコピーを提案。2024年度はダイドードリンコ㈱に未来の自動販売機を提案した。いずれもチームを組み、データ分析をした上で考案し、プレゼンテーションをして競う。
特別授業以外でも、中2で20時間あるデータサイエンスや社会科での社会科見学、理科の環境分野など授業を横断した連携もスムーズだ。SDGsを基調とした生徒自らの発案を、外部に提案しにいくこともある。先の「未来の自動販売機」も、社会科見学で鎌倉に行き、現場で課題発見をしてきた成果でもある。また、数学で学んだデータサイエンスも、理科や社会それぞれ環境問題の追究などで活用している。
なぜ、これだけ教科を横断して課題解決型の学びができるのかといえば、一朝一夕での取り組みではないからだ。実のところ探究学習は創立以来、「自由研究」という形で行ってきたという。こうした取り組みが、JSEC2024(高校生の科学コンテスト)の入賞につながっていると言っても過言ではないだろう。受賞した高等部の女子生徒たちはこの5月、ISEF2025に日本代表としてアメリカに派遣された。
61万㎡の敷地を活かしたプログラム「TAP(玉川アドベンチャープログラム)」もまた秀逸だ。中でも豊かな自然の中に設置されたハイエレメントを使ったチームワークやリーダシップの育成には定評がある。チームの一員としてまわりのことを考えた立ち居振る舞いもこうした機会の積み重ねで学べる。このプログラムを受けたくて、入学する生徒も少なくない。

多くの体験から失敗も学び、社会を生き抜く力をつける
中西先生は、将来、生徒たちが社会に出た時のことに思いを馳せる。
「保護者の方にお伝えしたいのは、子どもたちが何かをする過程でちょっとした失敗をたくさんさせてあげてほしいということ。新入社員がすぐに辞めたり、自分で辞職を言えなくて代行を頼んだりするなど話題になっています。今は最初から答えが出ていて失敗するチャンスの少ない時代でもあり、挫折に弱くなっているということも一因かもしれません。しかし、本校には様々なことに挑戦するチャンスがあり、時に失敗することもたくさんあります。ぜひ、ご家庭でも失敗を恐れないように背中を押してあげてください。特に得意なことで失敗する経験や、親や教員も失敗する姿を見せることが肝要です」(中西先生)
最後に中西先生は「将来必要とされる力を常に考えながら、教員や職員だけでなく、保護者や社会と〝四位一体"となって教育を進めていますので、ぜひ見学に来ていただければと思います」とメッセージを送ってくれた。