私立中高一貫校

五感で学び、驚きと発見を重ねる
鷗友学園の理科と伝統の園芸

鷗友学園女子中学高等学校

キリスト教精神に基づく豊かな全人教育を掲げ、「慈愛(あい)と誠実(まこと)と創造」を校訓とする鷗友学園女子中学高等学校。理系の進路を選択する生徒が多い背景には、同校ならではの体験を重視した教育がある。今回は、校長の柏いずみ先生と、理科教諭で入試広報部部長を務める若井由佳先生に、その取り組みについて話を伺った。

中1は“目で見てわかる”生物に特化し、科学分野への興味を育む

難関大学への高い進学実績で知られる鷗友学園女子中学高等学校。科学分野へ関心を向ける生徒も多い。それを支えているのが、体験を重視した同校ならではの理科教育だ。

校長の柏いずみ先生は、「本校では、創立当初から五感を通して学ぶことを大切にしています」と語る。授業では、知識を一方的に与えるのではなく、生徒自身が自分の目で確かめ、手を動かすことで、驚きや発見を重ねながら学ぶことを重視する。柏先生は「感動を伴って得た学びは、その人のなかに生きた知識として残ります」と続ける。こうした学びは、その後の学問や将来の進路への関心にもつながっていくという。

中1では生物のみを学び、中2から物理・化学・地学の授業へと進む。理科教諭で入試広報部長の若井由佳先生は、「まずは、『目に見える』植物や動物の観察を通して、生き物の不思議さや自然の美しさに気づくと同時に、理科が単なる暗記科目ではなく、身近な世界を理解するための手段であることを実感してほしいと考えています」と、その理由を明かす。授業は実験・観察を中心に進められ、生徒自身が手を動かし、自ら発見する過程を重視している。

観察のおもしろさを知り、仲間と議論を交わす

取材当日、中1の理科の授業で行われていたのは、実体顕微鏡を使った葉の観察だった。生徒たちはササとサクラの葉を手に取り、葉脈をしっかり観察しながらスケッチを進めていく。単に「ササは平行脈」「サクラは網状脈」と暗記するのではなく、「『平行脈』は本当に平行なのだろうか」と自分の目で確かめていくのだ。実物を前に観察を続けるなかで、教科書だけでは得られない発見も生まれる。たとえば、葉についた虫に興味を持つ生徒がいたら、「ちょっとみんなで見てみよう」というように、教師も生徒の「なぜ」に寄り添う。「脇道にそれたように見えても、その“おもしろい”という気持ちを大切にしたいのです」と若井先生は微笑む。

その一方で、基礎もおろそかにしない。中1では、顕微鏡の扱い方や記録の取り方などをていねいに学び、定期試験では「顕微鏡のピントを合わせることができるか」「ガスバーナーに火をつけられるか」といった実技テストも行う。全員が安全に器具を扱えるようになったうえで、次の段階へ進んでいくのだ。実際に、同校の入試問題でも、実験手順を順序立てて考えさせる問題を出題するなど、授業と同じ思考のプロセスを重視している。

ササとサクラの葉脈の比較観察を行う中1の実験授業。教員が作っ
た「実験書」に肉眼や顕微鏡で見たそのままのスケッチを描いていく

中2になると、力や分子といった直接見ることのできない現象を扱う分野へと学びを広げていく。こうした「見えるもの」から「見えないもの」へと段階的に学びを深めるカリキュラムによって、生徒たちは無理なく科学的な思考力を身につけ、理科への興味や探究心を育んでいくのである。

さらに、自分たちで仮説を立て、検証方法を考える実験にも取り組んでいく。そこでは、わからないことがあっても、すぐに先生へ答えを求めるのではなく、「どうしてだろう」「こうではないか」と仲間同士で議論を重ねることを大事にしている。

伝統の園芸の授業では、生命の重みに触れる

創立以来続く園芸は中1と高1の必修授業。中1は、校内の園芸実習園でラディッシュやつるなしインゲン、チンゲンサイなど、さまざまな野菜を育てていく。観葉植物のブライダルベールや花の栽培にも取り組み、生徒たちは年間を通して土や植物に触れる。

「知識よりもまず、自分で育てて食べてみることが大切なのです」と若井先生。ラディッシュの間引きをした際には、その日のうちに味わうこともある。最初は園芸に苦手意識を感じていた生徒も、自分で育てた野菜を収穫すると、「おいしい」と笑顔になるという。

園芸の授業には、自然相手ならではの難しさもある。野菜づくりでは、世話をする時期も収穫のタイミングも、「今やらなければならないこと」が決まっている。座学の教科とは異なり、すべての作業を人間の都合で延期したり、変更したりすることはできない。さらに、天候不順などの予想外の事態も起こるため、その場で判断し、対応する力や責任感が求められるのだ。

同じ畑に同じ時期に植えても、作物は一様には育たない。「こうした思い通りにならない自然と対峙する経験を通して、生徒たちは社会に出てからも必要となる判断力や責任感を、体験の中で自然と育んでいきます」と若井先生は語る。

生徒たちは少しずつ植物に愛情を持ち、責任感を育んでいく。高校生になると、自分の分だけではなく、うまく育たなかった友人のために予備を育てる生徒も現れるそうだ。もし余った際には「担任の先生に渡そう」「校長先生に届けよう」と自分たちで考え始める。植物を育てる経験が、自然と他者への思いやりにもつながっている。

寒さで霜が降り、花を枯らしてしまった経験から、農業経済や品種改良に関心を持った生徒もいるという。食料需給の問題や人工肉の研究など、さまざまな分野への興味のきっかけになることもあるそうだ。

教員が独自に作成するオリジナルテキストも特徴の一つだ。授業をより良いものにするため、毎年教員同士で話し合いながら改訂を重ねている。「教えるからには、どこよりもおもしろい授業をしたいという思いがあります」と柏先生。そうした教員たちの熱意は、生徒にも確かに伝わっている。そして、こうした日々の実験や観察の積み重ねが、生徒のなかに「もっと知りたい」という意識を育て、同校の理科教育の土台となっている。

最後に、先生方から受験生にメッセージをいただいた。

「鷗友学園は、生徒たちが伸び伸びと自分らしく過ごせる環境をお互いにつくっている学校です。今、受験でがんばっている皆さんにも、まだ自分で気づいていない可能性があります。鷗友学園でさまざまな人と出会い、自分の世界を広げながら、その可能性を一緒に見つけていきましょう」と柏先生は呼び掛けた。

一方、若井先生は、「学びは本来、とても楽しいものです。受験は大変かもしれませんが、どんな結果だったとしても、その先には『やってよかった』と思える世界が待っているはずです。がんばってください」とエールを送った。

(左)校長 柏 いずみ 先生 (右)理科教諭・入試広報部 部長 若井 由佳 先生

<校長 柏いずみ先生が語る「人生の節目に戻れる鷗友学園」>
 卒業後もふと帰りたくなる“母なる港”のような学校

卒業してすぐは、「居心地がいいからといって、すぐには帰ってこないでね」と送り出します。まずは外の世界で、それぞれの人生を一生懸命歩んでほしいからです。けれども、何十年か経って、人生の節目やつらいときに、ふと「鷗友があった」と思い出して訪ねてきてくれる卒業生がいます。校内を少し歩くだけで、「あのとき、こんなことをがんばったな。自分には『慈愛と誠と創造』という土台があったな」と思い出し、「また明日からがんばれます」と帰っていくのです。

卒業生同士も久しぶりに会うと、当時の熱い思いがよみがえってくると言います。一緒に汗を流し、時にはぶつかり合いながら過ごした時間があるからこそ、飾らない自分でいられる関係なのだと思います。

中学・高校で過ごす6年間は、人生全体から見れば短い時間です。けれども、その後の長い人生のなかで、ここで得たものをそれぞれが自分らしく生かしてくれたらうれしいです。卒業生たちの姿を見ながら、ここが“母なる港”のような場所であり続けたいと、あらためて感じています。

プログラムの内容は時代に合わせて変わっていきますが、創立当初から大切にしてきた「慈愛と誠と創造」のスピリットは、これからも変わりません。一人ひとりが自分らしく可能性を広げていける学校でありたいと思っています。