DDコースで海外大学と国内大学とのダブル合格者も
「感動の教育」を建学の精神とし、1974年に文化女子大学(現・文化学園大学)の附属校として誕生した同校。文部科学省のスーパー・イングリッシュ・ランゲージ・ハイスクール(SELHi)の指定を受け、効果的な英語指導の研究に取り組むなど、以前から英語教育に熱意を注いできた。
そんな同校が教育のグローバル化対応として、2015年度からこのコースに進学した生徒は、日本とカナダの高校卒業資格を同時に取得でき、卒業してすぐに海外大学へ進学する道が開ける。
今春卒業したその1期生は、カナダ西部の名門・ブリティッシュコロンビア大2名、オランダのユトレヒト大1名、フローニンゲン大1名などの合格実績を残した。さらには早稲田大3名、国際基督教大4名、上智大1名など、国内大学の合格実績も挙げた。中には早稲田大学と海外大学の両方に合格するなど、ダブルディプロマを体現する卒業生も現れ始めている。
なぜ、高校3年間で両国の高校卒業資格取得が可能なのか。それは同校がカナダ・ブリティッシュコロンビア州政府の「海外校」として認定を受けており、州政府に認定された5名のカナダ人教員が、同州のカリキュラムに則った授業を行っているからだ。
数学や英語など一部の授業は日本の高校の単位と読み替えが行われるが、それ以外はカナダの高校で学ぶ生徒と同じ単位を履修する。その傍ら、高2からは文理コースに分かれて国内大学の入試に向けた準備も行う。
高3の教室で行われていたDDコースの授業では、英文のエッセイを要約し、自分の意見を加えて話し合う授業が行われていた。生徒が「英語を学ぶ」のではなく、「英語で教員と対話している」様子は、まるで海外の高校のようだ。校長の松谷茂先生によると「高1段階で英検3級だった生徒が、卒業時には準1級レベルになる。同校では、それほど密度の濃いカリキュラム」が組まれている。
こうした成果を受けて、来年度から中2を対象とした「ダブルディプロマ準備コース」がスタートする。高校のDDコースを目指す生徒や帰国子女向けのコースで、カナダ人教員による英語の授業を前倒しで実施する。世界標準の学び方を早い段階で体感させ、国内外問わず高いレベルでの進学を実現していくことを目指している。
大学入試新テストに強い真の学力を育成
同校が進める教育改革のもう一つの柱は、思考力、判断力、表現力を鍛える「iプロジェクト」だ。先取り学習や少人数制の習熟度別学習を取り入れ、全教科でアクティブ・ラーニングや協働学習を実施する。
2018年度入学生は、このプロジェクトに基づく新たなカリキュラムで学習中だ。中1は基礎学力の定着に向けて、手厚く「鍛える」指導が特色。英語は週9コマ、朝テストと補習を連動させ、課題を翌日に持ち越さない学習方法を体得する。自学自習の習慣づけのために4つの自習室を整備し、午後7時まで生徒が自由に使えるようにした。
中2になると前述のDD準備コースか中高一貫コースかを選択する。DD準備コースと中高一貫コースの大きな違いは、「英語を誰が教えるのか」という点である。DD準備コースは、中2で週10時間の英語の授業のうち、8時間をカナダの教員が教える。中高一貫コースは、週9時間の英語の授業のうち、7時間をネイティブの教員が教える。大きな違いはそれだけである。後者を選んだ場合は高校でさらに「特進」「進学」の2コースに分かれ、それぞれの希望に合わせた大学進学を目指す。
2020年には大学入試改革が行われ、思考力重視の新テストが控えている。その時に結果を出すためには基礎学力と、多様な経験による柔軟な思考力、発想力が不可欠であり、同校では「新テストに強い進学校」を目指し、すべての教育活動の見直し、捉え直しが続いている。
共学化で多様な価値観を身に付ける
変化の大きなこれからの社会を生き抜く力を育成するには、多様な価値観に触れることが重要だ。男女共学化もそうした理念の下に実施され、現在は中1の4分の1を男子が占める。サッカーやバスケットボール、ゴルフなど、男子が加入できる部活動も増えつつある。
DDコース設置と同時に性別や国籍を超えてグローバルに学ぶ環境が整った今、目指す学校像について校長の松谷先生は熱く語る。
「本校は中学・高校で高い目標を持ち、学習や部活動、行事に取り組むことで得られる『感動』を大切にしている。目標を高く設定すれば失敗はつきもの。そこを乗り越える力、支えてくれる友達や周りの大人の力を実感することができれば感動と共に成長できる。今は子どもを失敗させないようにと『守る』風潮が強いが、本人が興味を持ったことは積極的に体験させてほしい」
教育改革と連動して入試スタイルも多様性に富む同校。スタンダードな2科目、4科目入試のほか、適性検査型、算数特別入試、英語特別入試など、個性と可能性を持つ生徒に来てほしいという意思が見て取れる。