充実した6年間に向けて、新入生の新生活をサポート
今年4月、晴れやかに挙行された八雲学園中学校の入学式。校長の近藤彰郎先生は例年以上に感慨深いものになったと振り返る。「今年度の新入生は2年間をコロナ禍の中で過ごし、受験を乗り越えてきた子どもたちです。いよいよ始まる中学生活への期待の大きさがこちらにも伝わってきました」
そんな生徒たちに応えようと、入学式直後の週末には中高合同で新入生歓迎会を開催。クラブ紹介などを通じて学校生活の楽しさを伝えた。5月の連休明けには中学生全員で球技大会を行った。近くの体育館とサッカー場を借り切ってバスケットボール、バレーボール、サッカーのクラス対抗戦を繰り広げ、大いに盛り上がったと言う。
同校では新年度のスタートを重視し、とりわけ新入生が無理なく学校になじめるよう十分な配慮をしている。入学式から続く楽しいプログラムはその一部ながら、重要なイントロダクションと位置づけているのである。「楽しむときは楽しみ、がんばるときはがんばるサイクルを身につけることで、高2、高3になったときに大学受験を乗り切る気力と体力が育っているのです」と話す。
生徒一人ひとりに目を向けて大切に育てる姿勢は、創立以来変わらない伝統だ。1938年に八雲高等女学校として誕生し、長く女子校としての歴史を重ねてきた同校は、2018年に男女共学校に移行。共学化から5年目を迎えたいま、男子と女子が互いの違いを認め合い、リスペクトし合える環境はより充実したようだ。共学化を機に一新した中高6年間のカリキュラムでは、2年ずつの3ステージ制を導入。中1・2で基礎学力を習得し、中3・高1で海外研修や留学プログラムを体験、高2・3で受験指導体制を確立する仕組みを整備した。1期生は高2になり、近藤先生は「今後の進学実績も期待できる」と自信を見せる。
英語を通して異文化に触れる、本物のグローバル教育を展開
現在、特に力を入れているのが、「グローバル教育・英語教育」「文化体験プログラム」「チューター制度」「ICTデジタル教育・進路指導」だ。
グローバル教育・英語教育では、生きた体験を重視。英語を通して異文化に触れることで、本物の国際感覚を身につけていく。同校のグローバル教育の歴史は古く、ロサンゼルスでの3週間の海外研修は1982年にスタート。1996年には4万8000坪の敷地を誇る海外研修施設「八雲レジデンス」をアメリカ・サンタバーバラに開設するなど、「40年にわたってプログラムを進化させ、環境を整えてきた。長年の経験と実績があります」と近藤先生は胸を張る。
なかでも、八雲レジデンスを拠点に中3生全員が参加する2週間の「アメリカ海外研修」は、中学での学びの集大成として大きな意味を持つ。コロナ禍で昨年と一昨年はやむを得ず中止したが、今年7月には機会を逸した当事者である高1生と高2生が時期をずらして出掛けることになった。
また、高1の希望者には3カ月間のアメリカ留学に3カ月ずつの事前・事後学習を加えた「9カ月プログラム」を提供。こちらもコロナによる延期を余儀なくされてきたが、昨年12月から今年1月にアメリカでの滞在期間を短縮して実施した。「あきらめるのは簡単ですが、このプログラムに参加したくて入学した生徒もいるので、何とか行かせたいと知恵を絞りました」(近藤先生)
感染予防対策を徹底して研修に出掛けた生徒たちは心から楽しみ、多くを学んで帰国したという。このほか、高校生対象の3週間のアメリカ海外研修など、充実した国際プグラムがそろっている。
世界50か国の私立学校200校が参加する国際私立学校連盟「ラウンドスクエア」の活動も活発で、今年度はイギリスで開催される総会に生徒が参加する予定だ。アメリカからの留学生を受け入れる計画も進んでいる。また、アメリカの名門イエール大学から学生を招いて交流を深めるなど、国内外の文化に触れる文化体験プログラムも長く続いている。「生徒の可能性は無限。多くの刺激を受け、それぞれの興味や能力、才能を伸ばすきっかけになればと考えています」(近藤先生)
手をかけ、支えることで、未来への可能性は広がる
チューター制度も同校ならではの特色だ。これは中学3年間、生徒一人ひとりに担当チューター(学習アドバイザー)がつき、日々の学習法から学校生活、部活動まで、あらゆる相談に応じるというもの。「チューターを務めるのは担任以外の教員。落ち込んだときや不安なときに、『大丈夫だよ』『こうしてみたらどうかな』と寄り添う存在です」と近藤先生は言う。「自立主義と称して生徒に手をかけない学校もありますが、本校は違います。この時期にしっかり面倒を見ることで子どもは可能性を広げ、大きく育ちます」と話す。
4つ目の教育の柱であるICTデジタル教育も進化を続けている。設備面のICT化をいち早く進め、環境は万全。そこからさらに、ICT機器を活用するスキルだけでなく、変化が激しいデジタル社会に対応し、最先端の環境に自分自身を適応させる力を鍛えることを重視している。「変化を受け入れる感性や考え方も育てるICTデジタル教育が本校の強み」との説明にも納得だ。
これらの教育を通して、同校では「高い英語力を持ち、他国の文化を理解し、多角的に物事をとらえることができる人物」と定義する次世代のグローバルリーダーの育成をめざす。「生徒一人ひとりを輝かせる教育がわたしたちの理想。学力向上にとどまらず、人間性を磨き、それぞれの能力が発揮できる環境を用意したいと考えています」と近藤先生は言う。「本校の教員は本当に熱心で、生徒を大事にします。それを見て生徒も周りを大事にする人に育っていく。八雲学園はだれもが自分の魅力に気づき、伸ばしていける学校です」 中学受験に際しては、学校選びを大切にしてほしいと近藤先生は強調する。「世間の価値観に惑わされず、自分の目で見ることが大事です。本校には難関大学をめざす生徒もいれば、海外の大学に進学したいとがんばっている生徒もいる。みんなを輝かせる学校かどうか。よく見て考えたうえで受験勉強に励んでください」とメッセージを贈ってくれた。