医師、弁護士など多彩なキャリアが待っている
「ダイナミックなキャリア選択ができるのが本校。卒業生のネットワークが幅広いのも特徴で、医師、弁護士など将来の進路は多彩です。進学率という数字だけで見れば、今はどの学校もよく見せることが可能です。本校は日本大学への進学率が74%(2021年度卒業生実績)ですが、自身のやりたい事を目指す生徒もいれば、東大にチャンレンジできる生徒も毎年います」と田中先生は語る。国公立併願方式を採用し、日本大学への推薦権を保持したまま国公立大学を受けられるのも魅力的だ。日本大学は16学部87学科ある、言わずと知れた日本一の規模の学部数を誇る大学である。学問領域はほぼ網羅している上、卒業生も多く、そのネットワークは強固だ。
高大連携も当然充実している。現在、日本大学の法学部、経済学部、生産工学部との間に科目等履修生制度があり、試験に合格すれば、その学部に進学した際、単位認定される。コロナ禍ではオンライン授業が中心だったため、より受講しやすかったようだ。また、全国に26校ある付属高等学校とも、海外研修やコンテストを通じて交流できる機会がある。
異性を頼れない男子校だからこそ可能なジェンダー教育
近年、減少し続ける男子校だが、日大豊山はその伝統を守り続ける数少ない男子校の一つだ。「いまどき男子校なんて」と思う向きも多いだろう。しかし、男子校の魅力は意外にも「真のジェンダー教育ができること」だという田中先生は話す。「男子しかいないため、異性に頼らず生活できるからです。汚れたユニフォームを誰が洗うのか?家に帰ればお母さんがめんどう見がちですが、男子校の合宿では自分で洗濯することが必至ですし、食事の準備もすべて自分でやります」。旧態依然のジェンダー・バイアスがかからない環境で過ごせるため、できることは自分でする姿勢が自然と育つ。大会に出れば他校はほとんどが女子という書道部も、日大豊山は男子だけでパフォーマンスに磨きをかけ、臆すことはない。
多くの保護者が共通して頭を抱える「中高生は弁当箱を出さない問題」も、最後のお弁当の日に「6年間ありがとう」の手紙と共に洗った弁当箱が置かれていたという保護者の話で、思わずホロリとなる。そのやさしさを育んでいるのは、仲間である同級生たちだ。ふだんから親に感謝する子どもは少ないが、学校で共に過ごす同級生との間で育まれたやさしさが、ここぞという時に家族に対しても素直になれる秘訣のようだ。
憧れの先輩たちをロールモデルに刺激を受ける
チューター支援プログラムでは、様々な大学で学ぶ卒業生たちが放課後の自習室で学習のサポートをしてくれる。「憧れの存在として、同性のロールモデルが身近にたくさんいることはかなり影響が大きいでしょう。同性の仲間が認めてくれることで、やる気のスイッチも入ります」と田中先生は話す。同校初の現役高校生としてオリンピック選手に選ばれた水泳部の柳本幸之介さん(2021年度卒)も文武両道の憧れの存在だ。「トップアスリートなんて一部の生徒の話で参考にならない」と思うかもしれないが、仲間の頑張っている姿を見て、それぞれの生徒が自分の居場所や得意な分野で「自分も頑張ろう」と励みになっているそうだ。まわりに波及する影響は大きい。
トップアスリートでなくても、スポーツを一生懸命やりたい生徒にとって、付属の中高一貫校で活動する意義は顕著だ。一般的にサッカー部の高3は、冬の大会を目指すか受験に専念するか選択を迫られるのはよく聞く話だが、日大豊山は高3の9月に日本大学に内部進学するための基礎学力到達テストが終わり、結果が出るとグラウンドに戻れる。スポーツ部でもほぼ100%が進学できているという。それは単に内部進学できる制度のせいだけではなく、基礎学力をしっかりつける教育の積み重ねの結果だという。中学の3年間の授業や部活動、探究学習、キャリア教育といったあらゆる教育活動の中でPDCAサイクルを徹底することで、無理のない計画を立てて学習する力が身についているからだ。
「本校はご家庭の力に恵まれています」と田中先生は話す。学校案内のパンフレットや、学校紹介の動画の中には、保護者が登場するものもあるが、みな快く引き受けてくれるという。家族ぐるみで豊山愛が止まらない。それは一人ひとりの生徒に6年間、日大豊山が寄り添ってきた結果だろう。
「生徒数の多さも本校の強みです。人数が多いと面倒見が悪いというのは間違い。人数が多ければ居場所も多くなります。それだけいろんなタイプの生徒が認められる場所が増えるのです。少人数では居場所も限られ、時には窮屈さも。多少のやんちゃは仲間が見守り、諌めてくれるので、のびのびと成長できます」。まさに「強く 正しく 大らかに」の校訓通りの環境がここにある。