WILLナビDUALアーカイブ 私立中高一貫校

多様性と柔軟性のある、自立した女性を育む

共立女子中学高等学校

東京の中心部・千代田区にキャンパスを構える共立女子中学高等学校。1886年の創立時から「女性の自主・自立」を理念に掲げ、社会で活躍できる人材の育成に取り組んできた。堅実な進学実績を残し続ける一方、知識・技能の「活用力」を高める実践に早くから取り組むなど、2020年の大学入試改革に向けた対応も着々と進んでいる。

2018年度から新たに「インタラクティブ入試」を実施

明治時代、34名の立場や分野の異なる人々によって創立した歴史を持つ同校。そうした経緯もあり、多様な価値観を受容する資質の育成が、創立以来の教育方針として貫かれている。

「本校には帰国生も数多くいますが、そうした生徒だけを集めたクラス編制は行いません。多様な個性・価値観を持った生徒が互いに関わり合い、時にぶつかり合うことを通じて、グローバル社会を生きていく疑似体験をしてほしいと考えています」と校長の児島博之先生は語る。

多様な生徒を集めることを目的として、同校では4科型の入試の他に、「海外帰国生入試」「インタラクティブ入試」「合科型入試」の3タイプの入試を実施している。このうち「インタラクティブ入試」は、2018年度入試から始まった新しい入試で、「算数(30分・50点満点)」の他に、グループワーク型の「インタラクティブトライアル(40分程度・100点満点)」が行われる。6人1グループで英語の自己紹介を行ったり、絵を見てストーリーを作るアクティビティを行ったりして、英語での理解力やコミュニケーション能力を観察・評価する。「帰国後3年以上経っていて帰国子女の要件に当てはまらない子や、幼少期から英会話教室に通ってきた子など、この入試を通じてさらに多様な生徒たちが入学してきました」と、広報部主任の金井圭太郎先生は話す。

2018年度入試では、「海外帰国生入試」の定員を10名から20名に増やし、国語と英語の選択を可能にした。こうした入試システムの変更に伴い、学校の雰囲気にも少なからず変化があったようで「今年度の1年生は、非常に活発で意欲的な子が多く、周囲の生徒たちに良い刺激を与えています」と校長の児島先生は言う。

「本校を一言で表すとすれば、『多様性と柔軟性を持った元気な女子校』」と話す校長の児島博之先生
1936年に建てられた校舎は、歴史的な趣が感じられる

2020年を見据えて「活用力」や「表現力」を高める

もう一つの「合科型入試」は、2016年度から始まった同校独自の入試方式で、「算数(50分・100点)」と「合科型論述テスト(50分・100点)」で構成される。「合科型論述テスト」では、複数教科の総合的な「活用力」が問われ、解答の大半は論述式となっている。2018年度入試では、社会科と理科の知識を活用しながら、つくば市の「福来みかん保存会」の活動について記述する問題などが出題された。

こうした入試を実施できるのは、同校が長年にわたり、教科横断型の教育実践を積み重ねてきたからにほかならない。その一つが、10年以上前から年1~2回実施している「特別教養講座」。複数教科の有志教員がチームとなって進める合科型の講座で、生徒たちは特定のテーマについて、国語や社会、理科などの知識を活用しながらフィールドワークや実験も交えて掘り下げていく。「現在、多くの学校が2020年の大学入試改革に向けて『思考力・判断力・表現力』などの育成に取り組んでいますが、本校ではかなり以前から、そうした実践を先取りする形で実施してきました」と児島先生は言う。

「表現力」の育成という点で特筆すべきは、あらゆる教科・領域で生徒たちがプレゼンテーションする機会を設けている点だ。例えば、国語では中学の全学年で「ブックトーク」を実施。生徒たちは、自ら作成したフリップを使いながら、1人2分間で本の内容や魅力を紹介する。また、宿泊行事の後は、事後学習として5~6人のグループ単位で発表を各クラスで行い、さらにはクラスの代表が学年全体の前での発表を行う。「共立講堂の舞台で発表する経験は、生徒たちにとって大きな自信になります。どの生徒も、学年が上がるにつれて、プレゼンテーション能力が向上していきます」と児島先生は言う。

教室には電子黒板を完備。来年度以降の入学生から1人1台タブレット端末を所持する予定
1800名を収容できる共立講堂。生徒たちがここで発表する機会も多い

6年間で存分に英語力を高められる環境

「海外帰国生入試」や「インタラクティブ入試」を行う同校では、学校生活を通じて英語力を高められる環境も整えられている。例えば、校内にはネイティブ講師が常駐する「ランゲージスクエア」があり、放課後などに生徒たちが訪れ、英語でのコミュニケーションを楽しんでいる。また、2015年度からは、中学校でオンライン英会話もスタートした。中1は年10回、中2・3は年30回、自宅のパソコンを活用して1回25分程度、海外のネイティブ講師からマンツーマンの英会話指導を受けている。

英語力を高めるための行事、留学プログラムも多彩だ。高1は全員が、福島にある「ブリティッシュヒルズ」での英語・英文化体験研修に参加。希望者は、カナダやニュージーランド、オーストラリアへの語学研修などに参加することもできる。

「本校では英検準2級レベル以上の会話力を持つ生徒には、希望制での取り出しの英会話授業を実施していますが、今年度の1年生は希望者が5倍以上に増えました。これも入試の改変により、英語でのコミュニケーションに積極的な生徒が増えたことの影響だと思います」と児島先生は分析する。

「ランゲージスクエア」では、放課後等に生徒がネイティブ講師と気さくに英語で会話をしている
校舎内には和室も完備。写真は「お箸の使い方テスト」の様子。「日本の伝統文化に触れることもグローバル教育の一環」と児島先生