学校教育としてのクラブ活動を重視
学校教育には、勉学とともに人間的成長を促す意義がある。男子の場合は、何でもぶつけ合える仲間や、お互いを認め合える環境があることが重要であり、とくにクラブ活動において、その真価が発揮される。
クラブ活動の指導を地域のスポーツクラブやプロ指導者に委ねれば、競技レベルは高くなるだろう。しかし、心身が発達途上にある生徒の人間的な成長という観点からみれば、家庭環境や学習状況、生活面について熟知している教員が指導する環境の方が、よりふさわしいはずだ。
だからこそ、本校ではクラブ活動を学校体育、学校文化活動として捉え、専門的な技術やスキルを持った教員が指導するという形を堅持しています」と田中正勝教諭は語る。
体育部(スポーツ系)のクラブ活動の顧問は、自らもその競技に打ち込み、楽しみ方を知り、指導の仕方も身に着けた教員ばかり。だから、オリンピック選手や国際大会に出場する選手が輩出することもある。ちなみに2021年には、水泳部に所属する高校の生徒が東京オリンピックに出場したが、スイミングクラブに所属しているわけではなく、練習も同校のプールで行っていた。だから帯同した教論も同校の地歴公民科の教員だった。一方で、水泳を趣味で楽しみたいという生徒もいる。そういう生徒と、インターハイや世界で戦えるハイレベルな生徒が一緒に練習できるのが、同校のクラブ活動なのだ。
学芸部(文化系)に関しても同様だ。鉄道部の顧問は、自ら長期休暇を利用してJRの全線完乗をするほどだし、生物部の顧問も、こん虫については非常に細かな知識を備えた専門家だ。生徒と同じ目線に立って、楽しみを共有しながら、その活動をサポートしていくことができる先輩として、生徒の興味をより深めてくれるはずだ。
「生徒が生き生きと輝いている姿は、クラブ活動を含めた課外活動の時間にもっとも良く見られるのではないでしょうか。そのときの彼らの目の色や、教員とどんな接し方をしているかを、ぜひ見に来てほしいと思っています」(田中教諭)
全国に約1万人いる付属生のネットワーク
付属校に充実した高大連携を期待するのは当然だが、日大付属の場合は、付属校同士の横のつながりにも注目したい。付属高生は全国に1学年約1万人おり、オール日大付属として、生徒会サミットやスピーチコンテスト、文芸コンクールなどを開催しているほか、文化祭で相乗りをすることもあるという。春夏2回実施されるケンブリッジ研修にも各付属高から選抜されたメンバーが参加し、切磋琢磨し合う。
「中高時代のこうしたつながりは、大学に進学した後も、社会に出てからも続いていきます。大学では現在、学際的な学びが進められていますが、他学部に仲間がいることで、そうした学びへのハードルが下がります。また、仕事をする際に何かと協力が得られることもあるでしょう。日大付属という巨大な人的ネットワークを持てることは、将来を通じて大きな財産になっていると思います」(田中教諭)
このスケールメリットは、キャリア教育や進路指導の面でも遺憾なく発揮されることになる。たとえば、中3で日本大学への学部見学を実施しているが、同大学は16学部85学科を擁する我が国有数の総合大学であり、あらゆる学問分野の学びに触れることができるの。これは、日大付属ならではの特長だろう。付属生ということで大学の教授陣も親切に解説してくれるほか、なかには、付属生を対象としたイベントを開催する学部もあるなど、大学での学びをイメージするには絶好の機会となる。
こうして、大学名ではなく学部内容から進路選択に入っていくため、学部のミスマッチがなくなる利点もある。
さらに、高校在校中に大学の単位が取得できる「高大連携教育に基づく科目等履修生制度」も用意されている。立地や通学時間などの関係から、現在は、日本大学法学部・経済学部・生産工学部と連携しているが、高校生の身分で大学の授業を受講できる。レポートや試験をクリアして単位を取得すれば、その学部に進学した際、卒業に必要な単位としてもカウントされる点は、大きなメリットだろう。
「高校生が受講していることは大学の先生にも伝わっています。ただ、大学生と区別することなく授業も試験も行い、なかにはAやSなどの好成績を取る本校生徒もいるといいます。高校生のうちから大学の授業を受講することで、ますます学ぶモチベーションが上がることになると思います」(田中教諭)
日本大学への推薦権を保持したまま国公立大学の受験も可能
日本大学への推薦には、様々なルートがある。まずは、全付属高校で実施される基礎学力到達度テストの成績による「基礎学力選抜」だ。基礎学力到達度テストは、高1の4月、高2の4月、高3の4月、9月の全4回実施されるが、このうち高1の4月を除く3回のテストの成績をもとに、進学する学部が決定する仕組みだ。その名前の通り、高校で学んだ内容の到達度を見るテストであり、高校の学習にどれだけしっかり取り組んだかが評価される選抜方式として、ある意味大学入試の王道といってもいいだろう。
次に「付属特別選抜」は、各学部のアドミッション・ポリシーに沿って行われる入試制度だ。高校3年間の成績をベースにして、各学部が満たす基準をクリアしている生徒が選抜される。
最後は、「国公立併願方式」だ。基礎学力到達度テストの成績などによって、日本大学への推薦権を保持したまま、国公立大学に出願できる仕組みで、安心して高い目標に挑戦することができる。
例年、4分の3は日本大学に進学しているが、国公立大やほかの私立大に進学する生徒も多い。なかには農学の研究への夢を持ちつつ、不本意ながら日本大学の短期大学部に進学したものの、そこでしっかり勉強して日本大学生物資源科学部に編入して大学院の修士課程に進み、ついに東京大学大学院の博士課程に進学した生徒もいる。また、公認会計士志望だった生徒が、高3でどうしても医療関係に進みたいと理転し、浪人を経て歯科医師になったケースもいる。
「こうした生徒たちは、豊山での仲間たちや教員の励まし、応援があったらかだと口を揃えます。安心して本音を出せるのが男子校の良さであり、日本大学豊山高等学校・中学校の教育環境なのです。ですから、男子校、付属校というカテゴリーではなく、教育の中味に真剣に向き合ってくださるご家庭に、ぜひ関心を持っていただいきたいと思っています」と田中教諭は語る。