世界トップレベルの学びと異文化を実体験する
「ボストン研修」は2018年度に導入され、今回が4年ぶり2回目の実施となる。海外大学への進学機運を高める、アカデミックな内容に特化したハイレベルなプログラムだ。
参加者の選抜にあたっては、応募者全員が提出する志望理由書や普段の生活態度などを参考にするが、優劣のみを基準にするのではなく、研修を通して成長する可能性なども鑑みて決定される。
午前中の「GEMセッション」では、各班に1人ずつ現地の大学生がリーダーとして加わり、与えられたテーマで議論を交わしながら、デザインシンキングの手法を学ぶ。午後には、ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学(MIT)を訪れて学生と交流したり、市内散策や美術館訪問を行うなど、ボストンの学問や文化に直接触れる機会を数多く設けている。それらはただの観光ではなく、例えば美術館にはビジュアルシンキングの手法を学んだ後実際に訪問するなど、目的を持って行っている。
事前・事後の学習に丁寧に取り組んでいることも特徴の一つだ。事前研修は全6回実施するが、そのうち1回は日本で学んでいる外国人留学生が来校する。実際に現地で研修に臨む際、堂々と話せるように、英語によるディスカッションにも取り組んだ。
帰国後には、研修についてのレポートをまとめ、「研修報告会」でのプレゼンテーションを通して、校内で情報を共有した。グローバル教育委員会主任の宇都宮貴代先生は、「東京都の英語弁論大会にエントリーしたり、自分たちで講演会を主催したりと、体験を外部に広く発信する生徒も出てきています。ボストン研修に参加して多くの挑戦を重ね、成長実感を持てたことで、次の挑戦へのモチベーションも高まっているのでしょう」と話す。
“英語で学ぶ”プログラムで、国際的な視野を広げる
ボストン研修で生徒たちが得たものは多い。研修に同行した社会科の下松由季先生は、現地での生徒たちの様子をこう振り返る。「大学訪問の際、『アメリカでは、専攻は大学入学後に決めればいい』と聞き、日本の大学との違いが強く印象に残ったようです。また、ゲストスピーカーとして現地在住の女性産婦人科医の先生をお招きしたセッションでは、キャリアプランや、プライベートと仕事をどのように両立させてきたかといった話に耳を傾け、将来についての考えを深めていました」
参加した生徒の感想には、「思考の幅が広がった、視野が広がった」「育つ環境や文化の違いで考え方も違う。決めつけてかかるのではなく、相手を知る努力が大切」「海外で働くことや海外留学等、将来の選択肢が広がった」といった言葉が並ぶ。宇都宮先生は、生徒の成長への喜びをにじませながら次のように語った。「生徒たちは、私たち教員が日頃から伝えたかったことのすべてを吸収して帰って来てくれました。同じプログラムでも一人一人の心に響く部分は異なっているため、さまざまなセッションを行うことの意義を感じています」
時代と共に進化を続ける、グローバル教育のプログラム
同校では“英語を学ぶ”のではなく、“英語で学ぶ”ことを主眼に、多彩なグローバル教育を展開している。海外で行うものとしては、ニュージーランド、カナダ、イギリスの3方面で約2週間ホームステイをする海外研修(中3・高1)や、ニュージーランド3カ月留学プログラム(高1・2)があり、この夏からの再開が予定されている。
一方で、国内での国際交流プログラムも充実している。インドの女子校とのオンライン交流プログラム、日本の大学・大学院の留学生を招いて5日間英語漬けになるGlobal Studies Program(グローバルスタディーズプログラム)のほか、オンラインで海外の大学と結んでリベラルアーツを学ぶ4日間のグローバルリーダー育成プログラム「Gras Grit」なども実施する。
「ほかにも多岐にわたるプログラムがありますが、現状が完成形ではありません。これからは言葉や文化、考え方が多様な人々と協働していく社会になります。バイアスをかけずに物事の本質をつかむためには、科学的思考力や論理的に考える力なども必須になってくるでしょう。生徒にとって必要なものは何かと常に考え、より良いプログラムを考案し続けていきたいと思います」(宇都宮先生)
「どのプログラムでも、参加するだけで終わるのではなく、学んだことや自身の変化を振り返り、グローバルな経験を自分の中に落とし込んで次のステップに進んでほしいですね」(下松先生)
積極的にグローバル教育のプログラムに参加していく中で、広い世界を知り、自分の可能性と視野を広げていく。そして、自分が選んだ道に向かって自信を持って歩みを進めていく。そんな生徒の姿が、同校のグローバル教育の目標でもある。
最後に、先生お二方からそれぞれメッセージが送られた。
「ボストン研修の感想の中で、『このプログラムで得た一番の宝物は、一緒に参加した仲間です』という生徒の言葉が印象的でした。メンバー同士に深い絆が生まれ、周囲に触発されて積極的に発言できるようになったという生徒もいます。本校はそんなふうに生徒同士が良い影響を与え合い、受け合える生徒が集う学校です」(下松先生)
「グローバルな視点や英語力は、文系・理系を問わず、今後の社会で必要になるものです。そうした力を養ういろいろな仕掛けを準備していますので、ぜひ学校に足を運び、本校のすてきな生徒たちと触れ合ってください」(宇都宮先生)