「本物」に触れる経験や体験学習で夢の芽を育む
玉川学園は、「ゆめの学校」として創立された。創立者・小原國芳は「夢」という字の「夕」の「、」を一画多い「、、」とし、子どもたちが多くの夢、大きな夢を抱き、実現に向けて努力できるような教育環境づくりを目指した。
中学部ではとくに「触れて、感じて、表現する」ことを意識した教育実践に特色がある。そのためには、とにかく「本物」に触れることが重要だ。この「本物」へのこだわりは、玉川学園の教育をもっとも象徴しているといっていい。
たとえば、開校後初めて迎える正月に実施されたスキー学校で、子どもたちの「どうせ習うなら世界一の選手に習いたい」という声を聞いた創立者は、学校に戻ってすぐに当時のトップスキーヤー、ハンネス・シュナイダー氏に電報を打ち、3月に招聘したエピソードは有名だ。莫大な借金を抱えたが、「借金の日延べはできるが、教育の日延べはできない」という強い思いで「本物」に触れる体験を実施した。次の年には世界三大体操の1つデンマーク体操(ラジオ体操の原型ともいわれている)を教える際も、その体操を確立させたニルス・ブック氏を招いて体操の授業をしていただいた。ベルリン・フィルやウィーン・フィルとの交流が毎年続いていたり、NASAの長官が訪れて講演を行ったりするのも、本物志向の延長上にある。
そうした課外活動だけでなく、教科教育においてもその姿勢は変わらず、本物、実物に触れることのできる施設は豊富だ。たとえば理科教育に特化した専門校舎「サイテックセンター」には、各種実験室のほか、最新鋭のデジタルプラネタリウムや天文台が備わっているし、美術教育専門校舎「アートセンター」では、木工・金工・染色・陶芸など多彩な表現活動が可能だ。このほか、図書館機能を備えた「マルチメディアリソースセンター」や博物館など、多彩な体験学習の場が用意されている。
「教科書で学ぶ場合にも、絵や写真の中にある情報から五感を刺激するような工夫を行い、単なる知識ではなく、深く理解させる教育を行っています。体験や交流、多面的な教科教育を通して、夢の芽を育んでいるわけです」と中学部長の中西郭弘先生は強調する。
6年間通して実施される自由研究で探究力を磨く
探究に特化した授業が、6年間毎週2時間行われる「自由研究」だ。創立以来続く玉川学園の「自由研究」は、今の「総合的な学習の時間」や夏の自由研究の源流といえる。
中1・2の段階は、教科発展型の自由研究で、探究の基礎を学ぶ。たとえば理科であれば、沖縄のサンゴを学校に送ってもらい、学内の水槽で飼育・研究をして再び沖縄に還す活動を行っているサンゴ研究などがあり、探究領域は全部で20近くにものぼる。
中3になると、探究を進めていく手法を学習する「学びの技」を1年間学ぶ。マインドマップを使って自分が何に興味を持っているのかを見つめることからスタートし、情報収集、情報整理、考察、論文執筆、発表までの流れを体系的・理論的に学んでいく。
「いきなりこうした技法を学ぶのではなく、その前に手さぐりながら2年間かけて実際に探究してきた経験があるからこそ、学んだ技法がしっくりと頭に入ってくるのだと思います」(中西先生)
高校からは、進路選択につながるような課題研究型の自由研究になる。人文科学、社会科学、自然科学、健康・生活、芸術の各分野に分かれ、大学の学びにも通じるような探究を行い、2年半かけて論文にまとめていく。
豊富な国際交流を展開するラウンドスクエア加盟校
本物に触れる体験の延長として、国際教育プログラムも豊富に用意している。カナダにはナナイモ校地を持ち、スタッフも常駐しているため、初めて海外を体験する中学生でも安心して学ぶことができる。このカナダ研修では、シーカヤックやボルダリング、キャンプなどの活動を通して大自然を満喫するプログラムが実施されている。
ハワイのプナホウ校とは生徒の相互派遣を行っており、玉川の生徒が訪問すると現地の生徒と一緒に2泊3日のキャンプを行ったり、日本文化を発表したりといった活動を行い、逆にハワイから生徒を迎える際は、一緒にスキー学校にいくなどの交流を行っている。
「交換は1対1で行われるため、互いに行き来することで絆が深まり、一生の友だちになったという生徒もいます」(中西先生)
また、国際的な私立学校連盟「ラウンドスクエア」に日本で最初に加盟した学校でもあり、現在44カ国240校以上のメンバー校と活発な交流を展開、年に1度行われる国際会議には毎年生徒を派遣している。ラウンドスクエアのネットワークを活用した生徒の海外派遣、受け入れをはじめとした国際教育プログラムは、4月〜3月まで毎月実施されており、年間を通して国際交流の機会がある。
「中3〜高2を対象にしたプログラムの場合、貧困や移民など一人ひとりテーマを持ってアメリカ東部研修やヨーロピアン・スタディーズ、アフリカン・スタディーズなどに参加し、グローバルな視野で課題を立ち向かう姿勢を育んでいます」(中西先生)
玉川らしい学びを生かして8割は年内に合格が決まる
海外も含めて「本物」に向き合う教育を6年間受けてきた生徒たちは、自らの学びを自らデザインしていくようになる。そのため、大学進学においても、自分が力を入れて取り組んできたことを生かす形で合格につなげているケースが多く、学校推薦型選抜と総合型選抜による合格者は、卒業生の約半数にのぼっている。
また卒業生の3割は、玉川大学に「学内総合型入学審査」を通して推薦で進学する。7月に出願するⅠ期と、12月に出願するⅡ期の2種類があり、Ⅰ期の合格者は、12年生で「高大連携クラス」に所属して、9月以降体育など高校での必修授業以外は玉川大学の講義を受講し、高校と大学を行き来することになる。高校在学中に大学の単位も取得することができるため、大学ではより多彩な活動に打ち込むことができるメリットがある。玉川大学への推薦も含め年内に合格が決まるのは約8割で、残りの約2割の生徒が一般入試で他大学に挑戦している。
「少子化などの影響で大学に入りやすくなっていることや、国公立も含め総合型選抜が増えていることもあり、玉川大学に進学する生徒の数は以前よりは減ってはいるものの、最近は、美術や音楽など芸術系の進路を選択する生徒も増えており、本学園での学びを生かして進学、活躍している生徒が多いことは、とてもうれしく思っています」(中西先生)