私立中高一貫校

4年目を迎える「国際コース」
探究活動や海外研修で英語力を磨く

江戸川女子中学校・高等学校

伝統的に英語教育に定評のある江戸川女子中学校・高等学校では、創立90周年となる2021年に、中学に「国際コース」を設置した。今年で4年目を迎えるこのコースでは、どのような学びが展開されているのだろうか。コース設置の背景や、英語による探究活動をはじめとする独自の取り組みについて、中学入試対策委員の水嶋瞳先生と国際コース1期生の2人に聞いた。

国際コース 和田依美里さん(高1)(左)と森脇楽々さん(高1)(右)

取り出し授業の増加を背景に、中学に「国際コース」を設立

1931年の創立以来、建学の精神「教養ある堅実な女性の育成」を土台に、知性と品性を備えた「自立した人」の育成を実践してきた江戸川女子中学校・高等学校。国際社会で活躍する女性としての素地を磨くため、とりわけ英語教育に力を入れているのが特徴だ。

中学の「国際コース」設立の背景について、中学入試対策委員の水嶋瞳先生はこう語る。「本校は1986年に高校に英語科を設置し、その当時はまだ珍しかった海外語学研修を開始するなど、長きにわたって国際教育に熱心に取り組んできました。近年では高校のみならず、中学にも高い英語力を持った帰国生などが多く入学してくれるようになり、英語の取り出し授業が増える傾向が見られました。そこで新しく中学に『国際コース』を設け、英語に特化したクラスを作ろうと考えたのです」

中学入試対策委員 水嶋 瞳 先生

国際コースの英語の授業は、英検®2級以上を取得している生徒を対象としたアドバンストクラスと、3級・準2級を取得した生徒を対象としたスタンダードクラスの2クラス制。それぞれの英語力に合わせた授業が展開されている。たとえば、アドバンストクラスでは、リーディング・スピーキング・ライティングの授業がネイティブ教員によるオールイングリッシュで行われる。現高1で、アドバンストクラス所属の和田依美里さんは、小6まで海外に住んでおり、そこで身につけた英語力を持続させたいという思いから、このコースを志望したという。当初はスタンダードクラスだったが、その後、アドバンストコースにステップアップ。「アドバンストコースでは、美術や音楽の授業も英語によるイマージョン教育が行われています。各教科の専門用語を英語で学べるというのは、とても刺激的です」と話す。

一方のスタンダードクラスでは、英語4技能と文法の授業は日本人教員が担当。テキストの内容に沿ったオンライン英会話や、オンラインの多読システムに取り組みながら、英語力をバランス良く伸ばしていく。同じく高1でスタンダードクラス所属の森脇楽々さんは、「クラスメートは、個性的でにぎやかな生徒ばかり。周りの帰国生がサポートしてくれるので、海外生活経験のないわたしのような生徒でも、刺激を受けながら英語力を伸ばすことができます」と語る。

ちなみに森脇さんは、英検®3級を持って入学し、現在は2級を取得済み。和田さんは、入学時は準2級で、現在は準1級を取得している。2人とも「在学中にさらに上の級をめざしたい」と意欲を見せる。

英語による探究学習で、実践的な語学力を磨く

いずれのクラスでも、英語の授業は週に9時間。そこには、語学としての英語の授業だけでなく、英語を使った探究活動「グローバル・スタディーズ」の1時間も含まれる。この授業は、ネイティブ教員の指導の下、世界が直面しているさまざまな社会問題について調査・研究を行うもので、最終的には英語によるプレゼンテーションがゴールとなる。発表に当たっては、入念なリサーチや資料作成が求められるため、「家庭学習に占めるウエートは、教科学習の宿題よりも、グローバル・スタディーズに関連する課題が大きい印象です」と森脇さん。

ネイティブ教員による英会話、マンツーマンのオンライン英会話、多読システムなどで英語4技能をバランスよく伸ばす

国際コース独自の取り組みの一つに、中3の希望者を対象にした「バリ島海外研修」がある。これは、多様な価値観や文化を体験し、社会問題を主体的に考えるもので、森脇さん、和田さんも参加したという。その感想について2人は次のように明かした。

「日本とは文化も環境も違うため、現地の生活に慣れるのにとても苦労しました。語学研修というよりも、SDGsや環境問題を学ぶことがメインのプログラムなので、日本とは異なる取り組みや工夫を見ることができて、とても刺激を受けました」(森脇さん)

「環境問題について英語で学べたことはとても貴重な経験でした。帰国後は研修内容についてまとめ、参加者代表として在校生に向けた英語のプレゼンを行いました」(和田さん)

今後の高校生活、その先の進路、キャリアについて考える原体験とするための英語探究プログラム

日本文化への造詣を深め、真の国際人に必要な教養を身につける

さらに、高校の国際コースでは、グローバル・スタディーズの一環として「オーストラリア課題解決型研修」(2週間程度)も用意されている。これは、事前に設定した社会課題に対して、現地の実態を視察し、他国の留学生とのディスカッションから国際的な視点を身につける課題解決型プログラムだ。また、海外留学制度も豊富で、「NZ、オーストラリア1年留学」、「NZ 1ターム留学」(10週間)、「イギリス語学研修」(4週間)など、短期から長期まで多彩なプログラムを取り揃えているところにも、国際教育の充実度がうかがえる。

同校では、年々高まる海外大学受験のニーズに応えるべく、2023年度から「U.S.デュアルディプロマプログラム」(希望者対象)を開始した。これは、日本とアメリカの高校卒業資格を同時に取得できる制度で、全米大学ランキングトップ19大学への推薦入学が認められるほか、立命館大学をはじめとする国内大学への帰国生入試の受験資格を得られるのがポイントだ。英語力を生かし、進学の選択肢を国内外に広げたい生徒にとっては画期的な制度といえる。

「国際社会においては、異文化理解のみならず、自国文化の理解も重要です」と水嶋先生が話すとおり、真の国際人をめざすためにはまず、日本のことをよく知っておく必要がある。そこで役立つのが、中学で実施される「特別教育活動」だ。1年次は茶道、2年次は箏曲、3年次は華道と学年ごとにテーマを変えながら、伝統文化への造詣を深めていく。「この授業では、自国文化への理解はもちろん、正しいマナーや美しい立ち居振る舞いも身につきます。ほかの学校にはあまりない取り組みだと思うので、受験生の皆さんには、ぜひ楽しみに入学してもらいたいです」と和田さんは話す。

茶道や華道などから“和のこころ”を育てる

最後に水嶋先生は、「国際コースの魅力は、オールイングリッシュの授業や、イマージョン教育、グローバル・スタディーズを通じて、専門的な語彙を自然に吸収できる点にあります。ここで培った高い英語力を武器に、国際人として世界に羽ばたく。そんな女性になってくれたらうれしいですね」とことばを結んだ。

※英検®は、公益財団法人 日本英語検定協会の登録商標です。