私立中高一貫校

本物に触れる豊かな学びで
個性を育み、未来を拓く

玉川学園中学部・高等部

「全人教育」の総本山ともいえる玉川学園。15年一貫教育を提唱し、幼稚園から高校3年までの園児・児童・生徒が、共通の理念の基に学んでいる。人格を磨き社会性を培うことが期待される中学部・高等部では、教科の枠を飛び越えた幅広い学びや、社会とのつながりを意識した活動を通して、自らの将来を自分の力で切り開いていく力を育成している。

中学部長 中西 郭弘 先生

あらゆる機会を通して多彩な体験を積み重ねる

玉川学園は、今年で創立95周年を迎える。創立者・小原國芳が掲げた「全人教育」の理念を実践する理想の学校たらんとして、今日まで歩みを続けてきた。全人教育、すなわち調和の取れた人格を育むには、いろいろな経験を積み重ねることが必要だとの信念に基づき、学内外での様々な体験活動を重視している。幼稚園から大学までが同じ敷地内に存在するワンキャンパスならではの多彩な施設も、そうした活動をサポートする。

たとえば図書館機能とマルチメディアシアターを備えた「マルチメディアリソース・センター(MMRC)」や、最新のデジタルプラネタリウムが併設されている理科教育の専門校舎「サイテックセンター」、木工・金工・染織・陶芸などの専門設備を有する「アートセンター」などのほか、全面人工芝のグラウンドや総合体育館、日本水泳連盟の公認プールでもある50mの屋内温水プールなど豊富なスポーツ関連施設が、キャンパスに点在している。

多彩な体験活動の代表的なものの1つが、「Art Lab」(アートラボ)の活動だ。「労作」と呼ばれる、労働による創作を行う活動で、学園内の里山環境整備で出る間伐材などを使って、学園のエンブレムやランプシェードなどを作ったり、安全な遊具を作って幼稚部に贈ったりといった活動を展開している。コンピュータ制御のルーターやレーザー加工機なども完備しており、生徒たちはこれらを自由に使うことができる。

「どの体験においても、『本物』との出会いを特に重視しています。子ども用ではなくプロが使う機械を使うこともその1つですし、世界のトップスキーヤーに教わるスキー学校や、ベルリン・フィルのメンバーからレッスンを受けるオーケストラ部、ラジオ体操第2の基になったデンマーク体操の創出者の招聘以来続くデンマーク体操もしかり。様々な本物に触れることで芽生える感動を起点に、個々の生徒の中にある一人ひとり異なる個性や能力を伸ばしてほしいと願っているからです」と中学部長の中西郭弘先生は話す。

様々な方の依頼によって作ったことのないものづくりにチャレンジするArtLab活動

地域と連携しながらSDGsに貢献する委員会活動

授業の中でも、本物や社会と触れ合う学びの時間は豊富に用意されている。昨年度の中1の技術では、魔法瓶で有名なサーモス株式会社とのコラボレーション授業を実施。「ペットボトルを削減するために私達の未来の社会を提案しよう」という課題で、各クラスともに3〜4人のチームを作ってアイデアを競い合った。また中2の生徒は、町田市と町田市バイオエネルギーセンターをPRしようということで、様々なデータを集め、アピールの仕方を工夫して、町田市環境資源部の職員の前でプレゼンテーションを行っている。

委員会活動も盛んだ。中学生は全員、高校生は希望者のみだが半数ほどが、学級委員や体育委員、環境委員、労作委員など何らかの委員として委員会活動に従事する。委員会は2週間に1度開催され、学年を超えた縦のつながりの中で行われる活動や、複数の委員会が合同で実施する活動などに、常に携わることになる。

「昨年度からは、①地域と連携すること、②SDGsに関わる活動を行うこと、③個々のキャリアアップにつながること、の3つを委員会活動の目標を掲げました。できればすべての目標をクリアしてほしいと思っていますが、最低でも何かを調査したり、働きかけたりといった個々の能力の向上につながる活動にはつなげていきたいと考えています」(中西先生)

地域の子ども食堂のボランティアをしたり、玉川学園地域の魅力を発信しようして活動している「坂のまち元気プロジェクト」の方を招いて協議したり、ゴミの分別について清掃工場を取材したりと活動は多岐に渡っており、多くの活動が「本物」に通じる「実社会」と関わることを重視しているようだ。

サーモス株式会社との特別コラボ授業。選抜された8グループがペットボトル削減のためのマイボトル活用のアイデアを発表

6年間毎週2時間ずつある「自由研究」で探究力強化

このほか、部活動や総合的な学習の時間を使った活動にも体験を伴うものが多い。総合的な学習の時間は、玉川学園では「自由研究」という名称で、中1〜高3までの6年間、毎週2時間ずつ時間割に組み込まれている点に特色がある。中1・2は、自分の興味・関心を伸ばすための教科発展型の自由研究、高1からは進路選択につながる課題探究型の自由研究になっているが、興味深いのは中3の1年間を「学びの技」を学ぶ時間としていることだ。

「探究活動には、世の中を広く眺めて課題を見極め、必要な情報を収集して、論理的に考察し、論文にまとめ、発表するという一連の流れがありますが、それぞれの場面で必要な知識やスキルを身に付ける授業として設計しました。中1・2で見出した興味・関心を、進路を意識した課題研究につなげていくためにも、重要な時間だと思っています」(中西先生)

なお、中2の段階でデータサイエンスの授業が20時間用意されている。数学や統計学、データ分析などを用いてビッグデータを扱い、有用な知見を見出す方法を学ぶが、こうしたスキルもまた自由研究の質を高めるのに役立っている。

自由研究(芸術:工作)
自由研究(芸術:立体造形(陶芸))

大学進学者の8割は総合型・学校推薦型

中学入学時から、「本物」に触れ、実社会とつながり、正課・課外を問わず自らの興味・関心を深め、高める学びを続けていくと、おのずと自分のやりたい方向性が見えてくる。だから、ほとんどの生徒は自らの意志で自分の進む道を決める。当然、大学の進学先は幅広くなり、医歯薬系が多い年もあれば、芸術系が多い年もあるなど、一定の傾向も見られなくなる。生徒が本当に自分の個性を発揮できる道を選べば、多様になるのは当然だからだ。

しかも、6年間の自由研究を通して、大学で探究すべきテーマが決まっている生徒も多い。だから中高時代の活動や個性が一切考慮されない一般入試よりも、総合型・学校推薦型の入試を選ぶ生徒が多い。実際、一般入試を選択する卒業生は2割程度で、8割が総合型・学校推薦型選抜で進学している。

このうち、玉川大学に進学する生徒は例年3割ほどで、条件を満たせば学内入試制度で進学できる。学内入試にはⅠ期と、Ⅱ期があり、Ⅰ期で合格すれば、夏休み以降は、高等部で必修科目を学ぶ以外は、大半の授業を玉川大学で受けることが可能になり、その分、大学での学びにも余裕ができる。

「もちろん、なかには明確な目標のないまま卒業していく生徒もいます。しかし、中高での様々な体験は血肉となっているはずですし、全員が探究の技法を身に付けていますから、大学では必ず、自らの生きる道を決めて歩んでくれると信じています」(中西先生)