
中1の柴又遠足から積み重ねていく中3修学旅行への準備
1931年の創立以来、「教養ある堅実な女性の育成」を建学の精神に、知性と品性を備えた「自立した人」の育成を実践している江戸川女子中学高等学校。なかでも、生徒たちの自立心を育むことを目的とした校外学習は、現地集合・現地解散を基本とし、生徒たちの社会性と自主性を育む重要な行事となっている。
初めての校外学習が行われるのは、中1の5月上旬。まだ入学して間もないこともあり、この時点では先生が決めたメンバーで、学校からほど近い柴又へ行き、班行動の基本を学ぶ。中2では、気の合う友人と班を組み、10月に横浜、3月に鎌倉を訪れる。現在、高1の中村芽凪さんは「仲のいい友だちと、どこに行こうかと話し合って計画を立て、自由に行動できたことが楽しかったです」と振り返る。
校外学習の集大成とも呼べる関西修学旅行は、10月に3泊4日の日程で行われる。3~5人編成の班は、クラスの壁を取り払っての編成が可能なため、生徒たちは、他のクラスにいる気の合う友人と京都・奈良をめぐることができる。中学入試対策委員の水嶋瞳先生は、この班分けについて「3年生だからできること」と語る。
「中1から築いてきた関係性のなかで行われる班編成なので、生徒たちは自由度が高いと感じていると思います。ですが、仲がいい者同士で構成するからこそ、班の全員が『友だちのために自分に与えられた役割を果たさなければ』と思う責任感も生まれると考えています」
かつては1日目の夕方に奈良の宿舎集合だったが、現在は午前中に東京駅で集合し、新幹線で京都へと向かう。1日目と2日目の午後はクラス単位での行動も交えつつ、3日目は朝から完全な班別行動に。京都の宿舎に17時までに集合するという日程の中で、生徒たちは班オリジナルのツアーを事前に組み上げていく。
失敗にも寄り添ってくれる家族のような先生がいる学校
班別の自由行動は、事前に利用する公共交通機関の時刻まで決めた詳細な計画書を作成・提出した後、実施される。定時連絡も生徒のスマートフォン内のアプリで行うため、何かトラブルが発生した場合でも迅速に報告できる体制が整えられている。
しかし、海外からの観光客でごった返す京都では、予定のバスに乗車できないというアクシデントも発生したという。
「宿舎での集合時間には間に合ったのですが、本当に焦りました。反省を踏まえて、翌日の自由行動は、時間に余裕が持てるよう、早め早めの行動を取るようにしました。校外学習を通して、いちばん学んだことは時間管理です。日頃から時計を見る習慣がつきましたし、すごく成長できたと実感しています」と中村さんは語る。
大人でも難しい時間管理を修学旅行という生活圏外で行うなかで、どうしても失敗する生徒も現れる。だが、そこで注意するのではなく、理由をたずねるのが江戸川女子の指導だと入試対策委員長の吉田秀徳先生は話す。
「時間に遅れたなどルールを守れなかったときでも、必ず理由があります。頭ごなしに注意するのではなく、しっかり生徒の話を聞くという姿勢を常に忘れないようにしています」
よく知らない土地での不慣れな移動手段ということもあり、修学旅行では、さまざまなトラブルが起こる。観光客で満員のために2本見送った後に乗車したバスが、想定外のルートを通ったために集合時間に1時間ほど遅れてきた班もあったとのこと。逐一状況報告があったため、それほど心配はしていなかったものの、生徒たちは泣きながら帰ってきたという。吉田先生は「こういう出来事が経験できるのも、校外学習の一つの成果だと思っています」と語った。

コミュニケーションを大切にして前向きに乗り切ることができた
失敗しても、まずは自分たちの話に耳を傾けてくれる先生がいる。そうした安心感のなかで、学校全体が一つの家族のように共に親しみ、敬愛しあうという現在の校風が確立された同校。生徒と先生との確かな信頼関係が、中村さん、そして両先生の言葉から伝わってきた。
気さくなトークセッションから伝わる、温かな校風
また、同校の学校説明会では、吉田先生と水嶋先生による、気さくなトークセッションが評判を呼んでいる。多くの学校では、決められたテーマに沿って担当の先生が話す、というスタイルだが、江戸川女子では吉田先生と水嶋先生が打ち合わせなしで、その日一番新鮮な学校関連トピックスを軽妙なトークを交えて紹介する。
「それまでは、パワーポイントを使って、学校での行事や部活動について、細かく説明していました。しかしあるとき、われわれの普段の様子を見せながら学校の紹介をするだけでも、江戸女がどんな校風なのかが伝わると思い、トークセッション方式に変えたんです。すると、説明会のアンケートで『先生方の雰囲気がよくわかります』『生徒と先生の距離が近いですね』というご意見が多く見られるようになりました」と吉田先生は振り返る。また、水嶋先生は「説明会に来てくださった皆さんに、楽しくお話を聞いてもらえるように江戸女のリアルをお伝えできたら。『どんなことをお話しようかな』と、毎回の説明会を楽しみにしています」と笑顔を浮かべた。
同じ学年を長く受け持ち、日頃からコミュニケーションを図っているという吉田先生と水嶋先生。二人の信頼関係に加え、明るく親しみやすい人柄と聞き取りやすい声も相まって、ラジオ番組を聞いているかのような気分になれるのもトークセッションの魅力だ。ぜひ、二人の楽しいやり取りから伝わってくる“江戸女”の校風を、ぜひ同校の説明会で直に感じてみてほしい。