WILLナビDUALアーカイブ 私立中高一貫校

21世紀型教育でさらなる「先」を目指す

文化学園大学杉並中学校・高等学校

2018年度から男女共学となり、「新・学力」を培うプログラムをスタートさせた文化学園大学杉並中学校・高等学校。2015年から始まった「ダブルディプロマコース(以下、DDコース)」の成果を受け、2019年度から中学に「DD準備コース」を新設。21世紀型教育をさらに前進させている。入試広報部長の西田真志先生に、同校の取り組みをうかがった。

英語〝で〟学び、世界中の大学へ進学

「文杉」の愛称で知られる文化学園大学杉並中学校・高等学校。「燃えよ!価値あるものに」をモットーに、勉強、行事、部活動に全力で取り組む生徒を育成してきた。先進的な英語教育で知られており、その象徴と言えるのが、2015年度に高校で始まった「DDコース」だ。

DDコースは、日本の「文化学園大学杉並高等学校」とカナダ・ブリティッシュコロンビア(BC)州政府の〝Bunka Suginami Canadian International School〟の両方の学校に在籍し、日本のカリキュラムと同時進行でBC州教員が授業を行うグローバルプログラム。日本のカリキュラムとカナダのカリキュラムを同時進行で受講するため、1日7~8コマの授業を受けることになるが、「英語でさまざまな科目を学ぶ授業」が週20時間以上あり、「聞く」「話す」「読む」「書く」の4技能をバランスよく高めることができる。また、ディスカッションやグループワークも授業の中に多く取り入れられており、英語と日本語を駆使して思考力やコミュニケーション能力なども育まれる。

DDコースのカナダの授業は、どの教科も英語で行われる

入学して約3カ月後の7月からは、BC州にて5週間の短期留学を開始。単に語学を学ぶのではなく、カナダの歴史・文化を学び「Social Studies 10」の単位を取得する内容だ。現地ではホームステイを通して「地球市民」としての視野を広げる。

卒業時には、日本で唯一カナダBC州と日本の両方のディプロマ(卒業資格)を取得できる。ダブルディプロマを手にすることで、カナダをはじめアメリカ・イギリス・アイルランド・オーストラリア・ニュージーランドの全ての大学に出願可能。また国内私立大学へも帰国生枠での受験が認められるなど、受験チャンスが広がるのもDDコースの大きなメリットだ。「入学時、約半数は英検準2級レベルでしたが、3年の9月までにほとんどの生徒が準1級を取得。1級レベルに到達する生徒もいます。日本に居ながらにして英語をシャワーのように浴び、正しい英語〝で〟授業を受けられることで、英語力を大きく伸ばすことができます」と入試広報部長の西田真志先生は語る。

2017年度に卒業した第1期生は、13名中5名が海外大学へ進学。いずれも世界のトップハンドレッドに入る大学だ。国内大学の合格実績も高く、中には早稲田大学と海外大学の両方に合格するなど、ダブルディプロマを体現する卒業生も現れた。今春卒業した第2期生15名は、海外大学に3名進学し、また、東京外語大、早稲田大、上智大、ICUなど国際教育に定評のある大学に合格を果たしている。中には帰国生枠を利用した例もあり、高い英語力が受験の際にも大きな強みとなっているのがうかがえる。なお第1期生、第2期生は全員文系だったが、第3期生となる高3生は文系・理系コースに分かれ、国内外の上位大学を目指している。また共学1年目となった高2生のクラスでは、女子35名に対し男子は8名と少なかったが、高1生は男子14名女子26名と男女比は小さくなりつつある。開設5年目を迎えてDDコースの認知度も高まっており、卒業生の進路は今後ますます広がっていきそうだ。

こうした高い実績を受けて、2019年度から中学に「ダブルディプロマ準備コース」がスタート、中2から「DD準備コース」か「中高一貫コース」を選べるようになった。DD準備コースは週10時間のうち8時間をBC州教員が担当。一方の中高一貫コースでは週8時間英語の授業があり、ネイティブ教員が6時間を担当する。

「2つのコースの違いは英語のみで、それ以外の授業は共通カリキュラムで行いますし、学校行事などのイベントや部活動などに対する取り組み方も変わりません。わかりやすく言えば、中高一貫コースが英語〝を〟学ぶのに対し、DD準備コースは英語〝で〟学ぶ。高校のDDコースにつながる高い英語力と、カナダの21世紀型教育を先取りで学べるのがDD準備コースの魅力です」(西田先生)

DD準備コースは英検4級レベル以上などの一定の基準が必要ではあるが希望者全員が受講可能で、第1期生(2019年中2生)90名は、DD準備コース59名、中高一貫コース31名に分かれた。特に男子は23名全員がDD準備コースを選択。英語修得への強い意欲がうかがえる。

ただし、英語が得意な生徒だけを対象にしているわけではない。中1からの英語は、少人数制で習熟度別に実施しており、生徒のレベルに応じて学べるよう配慮されている。 「本校には帰国子女や海外での生活経験がある生徒を対象とした帰国生入試や、帰国生ではないが英語を習い事で勉強していた生徒を対象とした英語特別を実施しています。とはいえ、公立小学校で普通に学んできた生徒や英語があまり好きでない生徒ももちろんいます。そんな生徒にも英語に興味を持ってもらいたいし、英語でコミュニケーションを取る楽しさを実感して欲しい。そして将来の選択肢を増やして欲しいですね」と西田先生は語る。

新設のLABO教室で、プログラミングやロボット製作に取り組む

「Play Labo」を4月に新設。プログラミングやロボット制作などにも使用

2018年度より、「新・学力」を培うプログラムをスタートさせた同校。その柱となっているのが「iプロジェクト」だ。Impressive(感動的・印象的)、intelligent(知識・技能)、international(国際的)。世界標準に向けた大学入学共通テストに対応する3つの「i」を身につけるべく、「問題発見」→「協働」→「問題解決」→「発信」の一連の流れを学びの随所に取り入れ、「思考力、判断力、表現力」を徹底的に鍛えていく。また朝テストの結果を踏まえた補習を行い、課題をその日のうちにクリアできるようなルーティン学習や、外部予備校講習、午後7時まで(高校生は午後8時まで)使える自習ルームなど、環境面も含め、さまざまな取り組みが進んでいる。

「MIRAI館」に新設した自習室は午後8時まで利用可能
図書室には自習ブースを増設

また2019年度から、「STEAM教育」の強化にも乗り出した。STEAM教育とは、科学・数学・技術領域に重点を置く教科横断型の教育として注目されているSTEM教育に、「A(ART」=芸術を加え、理数系の科目や芸術領域に力を入れる教育方針。文化学園大学の附属校である同校ならではの取り組みだ。

「女子校時代は、理系というと医療・薬学などの分野を志望する生徒が多かったのですが、共学になったことで工学・技術系を志望する生徒が増えたことが背景にあります。文化学園大学にはファッションや美術の分野の専門学部がありますから、プログラミングや工学分野を充実させていくとともに、デザインや表現といったアート分野を加えた本校独自の教育展開を考えています」と西田先生。具体的には、4月に新しいLabo教室である「Play Labo」を新設。自由に配置が変えられる机や椅子、プロジェクターなどを設置し、目的に応じてフレキシブルに利用できる教室で、プログラミングやロボット制作などのものづくりにも活用。体験を通して理系分野に興味・関心を持ってもらえるような利用を意識している。また高校では、特別進学コースに理数クラスを設置し、探究学習に力を入れていく方針だ。

次代を見据え、すべての教育活動の見直し、据え直しを進めている同校。さらなる先を目指す同校のチャレンジは、始まったばかりだ。

「Play Labo」室で語る入試広報部長 西田 真志先生