多様化する進路に合わせた5コースがスタート
昭和学院中学校・高等学校が男女共学化(2003年)、昭和学院全体の新キャンパス計画による新校舎完成(2010年)を経て、新制服の導入に加え、新コースというさらなる転換を図ったのは、「変わらないために変わる」ためだという。多彩な才能をもった生徒たちの渾然一体とした学び合いに対し、個別指導を徹底させながら、各自が希望する進路へと送り出すサポートをしてきた同校だからこそ、よりいっそう多様化する進路に合わせたコース制によって、早期からキャリア設計に対する意識を育み、一人ひとりが目標とする進路を実現すべくサポートする、そのための新コースだ。
新たなコース制は、中学スタート時ではIA(インターナショナルアカデミー)、AA(アドバンストアカデミー)、GA(ジェネラルアカデミー)の3コース制で、中学3年から、TA(トップグレードアカデミー)、AA(アドバストアカデミー)、文武両道のAA(アスリートアカデミー)を加え、高校もこの5コースで内進生と外進生を分けずに共に学ぶ。
国際感覚を育成するIAでは、海外の大学・ICU・国際教養大学・東京外国語大学・上智大学など国際的な教育で知られる大学を目指す。TAは東京大学など最難関国立大学、AAは千葉大学などの難関国公立大学・難関私立大学、スポーツ・芸術と学習の両立を実現するAAは筑波大学・慶應義塾大学・早稲田大学などアスリートが多く進学する国公立大学・難関私立大学、GAは国公立大学・私立大学を目指し、多様な学びに対応する。
ニーズの高いインターナショナル系のコースは生徒も多彩
今回、着目したいのはIAだ。担任は日本人教員とネイティブの2名体制で、ホームルームはオールイングリッシュとなる。クラスをさらに習熟度別の2つのグループに分け、レベルに合わせた少人数教育も行う。
「IAの生徒は皆、英語の能力が高く、やる気にあふれています。1年生なので最初はあまり英会話ができない生徒もいましたが、すぐに簡単な日常会話を話せるようになり、ネイティブの教員にも積極的に英語で話しかけてきます。間違えてもいいという指導をしていますので、恥ずかしがらずに英語で話すことを楽しんでくれています」(フォーブス先生)
「入試方式が多様なため、集まった生徒も多彩です。帰国子女もいるため、スムーズに英会話のできる生徒が、できない生徒に教えてあげるシーンなども見られ、互いに影響を与え合っています」(中森先生)
ICT教育の活用・発音の強化等が、英語で学ぶための力に
同校独自の授業として、世界のことを英語で学ぶ「英語探求」がある。世界中のトピックスから先生が決めたテーマについて、一人ひとり調べ、グループでまとめた内容をプレゼンテーションする。これまで「5感」を切り口に、視覚や聴覚を失った人について調べたり、「ストリートアートは芸術か落書きか?」などをテーマにして実施してきたそうだ。
「教科書以外で世界の文化や習慣を学ぶことによって視野が広がります。同時にICTを使って自分で調べる力、プレゼンテーションする力、計画性などを身につけることができます」(フォーブス先生)
同授業では、同校がこれまで推し進めてきたICT教育が活き、全生徒に貸与するiPadが活用される。実際に使いながら指導を受け、自然と情報リテラシーが身につく仕組みも持つ。
また、「ジョリーフォニックス」(イギリスで開発された発音の基礎を身につける指導法)を導入し、小文字の発音を正確に理解することにも力を入れている。
「イギリスでは幼稚園から活用されている指導法で、ネイティブの発音が身につけられるんです。そのため、昨年度は市のスピーチコンテストに出場した結果、県大会まで進出し、初優勝することができました。県大会レベルでは美しい発音が必須ですが、ジョリーフォニックスによって非常に高い効果を得られました」(フォーブス先生)
「小文字の発音がわかれば、初見の単語を読む時に役に立ちますし、読めれば話す力、聞く力もついてきます」(藤井先生)
2020年度はコロナ禍で外部コンテストの中止が相次ぐが、同校では校内でスピーチコンテストを実施し、生徒たちが力試しできる場を設ける予定だ。
小学校時代から英検®に挑戦するなど、すでに上級資格を取得している生徒もいるが、高校を卒業までにIAの全生徒が英検一級レベルまで到達するような指導に努めたいという。英検指導のために、自宅学習用の教材として『文で覚える単熟語』(旺文社)を採用。文章を一つ自宅で覚え、毎週金曜までに先生の前で暗唱するというルーティンを繰り返す。「最初は暗唱を嫌がっていた生徒も、できるようになってくると能動的に行うようになりました」(フォーブス先生)
海外に行けないコロナ禍でも校内でプチ海外体験が可能
一方で、国際教育に注力する学校にとって痛手だったのはコロナ禍だろう。語学研修や修学旅行で海外へ行けない現状はすべての学校にとってネックとなっている。しかし、中止となったイングリッシュ・キャンプに代わるものを検討中の他、校内で行う特別海外研修「エンパワーメントプログラム」など海外に行かずともプチ海外体験ができるプログラムが充実している同校では、国際教育の質への不安はない。「エンパワーメントプログラム」は、来日中の留学生や社会人とディスカッションするプログラムで、オールイングリッシュで進行する上、海外の一流大学の学生たちから受ける刺激は計り知れない。また、2018年度から導入されているiPadを利用した「オンラインスピーキング」(中3対象)も、新コース導入によって内容が強化されているというのだから心強い。
「IAに入学してきた生徒に将来の希望を聞くと、半数は海外の大学に行きたいと言っています。現状の日本の教育で海外の大学に進学する場合、大半はカレッジからになりますが、本校では最初から4年制大学に進学できる力をつけさせたいと思っています。そのため、6年間という長いスパンを利用し、中学では英語で学ぶための基礎を身につけ、高校では英語で他教科を学べるようにするつもりです」(中森先生)
「帰国子女もいるため、英語力の違いを心配されるかもしれませんが、入学時には英語力の高さは気にしないでください。一緒に勉強しているうちに、互いに上達していきます」(フォーブス先生)
まだスタートしたばかりのIAだが、日本人とネイティブの混合チームで丁寧に生徒を育成する熱量の高さがうかがえた。
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