「発話」を重視した少人数授業で 実践的な英語力を身につける
国際社会に通用する人材育成の一環として、普連土学園中学校・高等学校が注力する教育の柱の一つが、英語教育だ。希望進路を実現するための学力定着はもちろんのこと、実践的な英語力を身につけるための「4技能」をバランスよく網羅したカリキュラムを展開している。
同校の英語教育を支える強固な基盤となっているのが、日本人教員と専任のネイティブ教員間の密な連携である。日本人教員は文法や語彙を、ネイティブ教員は表現方法を中心に分担して指導を行うが、双方が生徒たちの学習状況を細かく共有しているため、「すでに学んだ内容を踏まえた、効率的な英語教育が可能となっています」と、池田先生は語る。
ネイティブ教員による授業は、「必ず生徒全員が発話できるように」という狙いから、教員1人に対し、生徒15人以下に抑えた少人数制を徹底。特に中学の間はゲームや劇といった、英語を楽しみながら学ぶためのプログラムがふんだんに取り入れられており、早い段階から苦手意識を持つことがないように配慮されている。
春や夏の長期休暇中に、「教養講座」を開講するのも同校の特色だ。多岐にわたる講座のなかでも、特に注目されるのはネイティブ教員による英語プログラムの充実ぶりだ。英語能力試験の一つである「TEAP」のスピーキング対策に特化した講座から、イースターエッグを作る講座、プラスチックごみなど社会問題について議論する講座まで、バラエティに富んだ内容で生徒たちの興味・関心を高めている。
また、ネイティブ教員による英会話授業は、高1までしか行わない学校が多いなか、同校では高2・高3でも週に1時間の必修授業を設けている。その内容は、世界的な大規模講演会である「TED」を題材に、より高度な英語表現を学ぶというもの。そうした発展的な授業が奏功しているのか、センター試験と比べて難化したといわれる大学入学共通テストのリスニングの模擬試験を実施したところ、高3の大半が高得点をマークしたという。
国際的な活躍が目覚ましい課外活動も、英語学習のモチベーション向上に貢献している。同校には、「Friends Fab(フレンズ・ファブ)」と呼ばれる、電子工作やプログラミングに取り組む活動団体がある。そのメンバーが、国際的なロボット競技会「FIRST® LEGO® League(FLL)」のデンマーク大会(2017年)と、トルコ大会(2019年)に出場した際のエピソードを紹介しよう。「FLL」では、プレゼンテーションや質疑応答を英語で行うため、英語を母語としない国や地域からの出場者が不利にならないよう、通訳者をつけることが認められている。しかし、同校の生徒たちはあくまで自分たちの力で乗り切りたいと、通訳の同行を断った。「大会を通じて、少なからず『言いたいことが伝わらない』という悔しさを味わったようです。しかし、その経験が糧となり、以前よりも英語学習に意欲的に取り組むようになりました」と池田先生。英語を「目的」ではなく「手段」として学ぶことのできる環境が、生徒たちの力を伸ばしている。
「マイクロスケール実験」を導入 理科に対する苦手意識を払しょく
英語教育と並んで、同校が力を入れているもう一つの柱が、理科教育だ。高1では、物理基礎・化学基礎・生物基礎が必修となっており、得意・不得意にかかわらず、すべての生徒が自然科学の素養と、論理的思考力の習得をめざす。
特に注目すべき点は、授業内で行う理科実験の数の多さだ。中1の1年間では約50回、高1までの4年間の累計では、約120回にも上る。さらに、理系選択者は、高2以降、そこから40~50回がプラスされる計算となる。
これらの理科実験において、同校が導入しているのが「マイクロスケール実験」と呼ばれる手法だ。一般的な理科実験では、グループごとに実験器具を1セットのみ置いて、生徒間で交代しながら作業を行うのが主流である。だが、この手法では、小さな実験器具に必要な薬液を小分けしたものを、グループの人数分用意して行う。マイクロスケール実験は、グループ内で「見ているだけ」のメンバーが生まれるのを防ぎ、実験の一連の流れを1人で完結させることができるという点で、非常に大切な工夫なのだ。
「実験では、実際に自分の手を動かさないと、そのおもしろさに気づくのが難しくなります。その点で、マイクロスケール実験は、一人ひとりが作業に携わり、達成感を感じることができるため、理科の魅力を知る大きなきっかけとなっているようです」(池田先生)
入学したばかりの中1の生徒たちに、理科の学習に関するアンケートを取ると、7割近くの生徒が「苦手」と答えるという。しかし、高2の文理選択の際には、理系クラスを選ぶ生徒は4割近くになる。このことからも、「マイクロスケール実験」をはじめとする充実した理科教育が、理科への苦手意識を払しょくし、生徒の理系分野への好奇心を高めていることがよくわかる。
増え続ける理系進学者 「算数一科目入試」の新設も
理科教育の成果が広く認知されたためか、ここ最近では、多くの理系志望の女子小学生が、同校への入学を希望するようになった。それに伴い、近年は大学進学実績にも少しずつ変化が見られるようになったという。「10年ほど前までは、理系学部への進学者は、全体の30%程度でした。しかし、この5年は、毎年35%超で推移しています。その内訳も、女子校にしては珍しく、工学系が多いのが特徴です。さまざまな理科教育を通じて、生徒たちの視野や興味が広がり、進路実績に良い影響をもたらしていることは間違いありません」と池田先生は分析する。
そうした流れを受けて、同校では2019年度から、2月1日の午後に「算数1科入試」を新設した。その背景には、「基本的な算数の力があり、理系分野に興味・関心のある子どもたちへのチャンスを広げたい」という狙いがある。2021年度入試では、定員20名に対し、受験者数は259人。この数字からも、同校の算数1科入試に対する、受験生の高い注目度がうかがえる。
特色ある英語教育と理科教育の二本柱で、生徒たちの可能性を最大限に伸ばし、文系・理系にとらわれない幅広い教養の習得をめざす普連土学園。池田先生は、「1学年3クラスというアットホームな環境のなか、教員と生徒の距離の近さを生かした、きめ細やかな教育を行っています。『英語のコミュニケーションを楽しみたい』『たくさんの理科実験に挑戦してみたい』といった希望を持つ受験生は、ぜひ本校で可能性を広げてほしいと思います」と言葉を結んだ。