WILLナビDUALアーカイブ 私立中高一貫校

教科学習だけでなく、クラブも行事もすべて大切に
自分の居場所があってこそ能動的な学びが生きてくる

鷗友学園女子中学高等学校

「慈愛(あい)と誠実(まこと)と創造」という校訓のもと、女子の特性に配慮しながら、その能力を最大限に伸ばす独自の教育を実践している鴎友学園女子中学高等学校。近年では難関大学への高い合格実績で注目されるほか、中学受験における人気も年々高まりを見せている。そんな同校は、1年以上続くコロナ禍においても、学びを停滞させることはなく、不安定な状況でのさまざまな取り組みさえも生徒たちの主体的な学びにつなげている。その教育方針や学校生活について、校長の大井正智先生に聞いた。

ふだんからICTを積極的に活用 オンラインへの移行もスムーズに

校長 大井 正智 先生

鷗友学園が最も大切にしているのは、生徒が主体的に学ぶことだ。そのため、1935年の創立時からアクティブ・ラーニング型の授業を取り入れてきた。そして、このアクティブ・ラーニングをより効果的に進めるツールとして、積極的に活用しているのがICTだ。6年前には全教室にプロジェクターを設置し、翌年には校内をWi-Fi化。中学生は学校が貸与するタブレット端末を学習に生かす一方、高校ではBYOD(Bring Your Own Device)を導入。各自が所有するタブレットやノートパソコンを持参し、授業で活用している。

こうした“備え”があったため、新型コロナウイルスの感染が拡大した昨年春以降も、オンラインでの教育活動に移行するのはスムーズだった。一斉休校の要請が出たため、3月初めから休校が続いたが、入学式や高校進学式などはオンライン配信で実施。その後、5月の連休明けからは各家庭の通信環境を考慮しながら、きめ細かいガイドラインを作成したうえでオンライン授業を開始した。授業の進め方は、双方向にしたり、動画配信にしたり、課題を与えて提出させたりと、各教科の教員が工夫を凝らした。学びを止めず、すべての教科を時間割通りに実施させたことでカリキュラムの遅れは出なかったという。

そして今年は、通常のカリキュラムをこなしたうえで、学校生活のすべてを生徒全員が経験できるようにと考え、新学期をスタートした。校長の大井正智先生は次のように話す。

 「本校ではクラブ活動や学校行事も授業と同じように大切な学びの一つであると考えています。緊急事態宣言下では16時を下校時刻とし、1コマ50分間の授業を40分間に短縮することで、クラブ活動の時間も確保しています」

1コマの授業時間を50分から40分に間短縮しても、カリキュラムの遅れはないそうだ。理科の実験では、実験前に仮説を立て、実験後に考察をするのが同校のやり方だが、今年度も、そうした例年どおりの流れでできているという。

高校では自分の愛着のあるデバイスを自由に使用できるBYODを取り入れている

中止ではなく、「最善を尽くす」学校行事 コロナ禍ならではの学びもある

学校行事もできる限り実施する方針だ。毎年9月に開催する学園祭は昨年、保護者は入場可能にしたが、一般客は入れないかわりにオンライン配信を実施した。

「今年も状況によってはオンライン配信になりますが、学園祭実行委員の生徒達が最大どこまで来場者を入れられるかなど、さまざまなケースを想定して検討しています」(大井先生)

一方で、コロナ禍の行事だからこそ、ふだんとは違う学びもできる。たとえば学園祭をオンライン配信する際には、使用する楽曲によって著作権を管理している機関から使用許可を取る手続きが異なるが、同校ではそれを高2の生徒が中心となって確認し、自分たちで交渉を行っている。海外の楽曲についても、手続きが面倒だからと使用をあきらめたくないと、海外の機関に英語でメールを出して許可を取った生徒もいると言う。このように同校では、コロナ禍の行事などで困難を乗り越えるための試行錯誤も、生徒の主体的な学びにつながっているのだ。

そのほか昨年の学園祭では、生徒たちが自分の特技を生かしてさまざまな動画を投稿した。そのなかで、中2生のグループが制作した『お茶会ラジオ』というラジオ番組風の動画が人気を博した。それを受けて、同校の2021年度学校説明会ウェブサイトでも、同じ生徒たちが学校生活を紹介する『お茶会ラジオ』の動画を作成し、定期的にアップしている。

一方、宿泊行事に関しては、実施は難しい面もあるが、同校では昨年、中学も高校も修学旅行(中学は沖縄3泊4日、高校は京都・奈良4泊5日)を実施することができた。フロア貸し切りや分宿など、密を避ける工夫もできたと言う。

また、中1の最初の宿泊行事に、2泊3日で実施する長野県の追分山荘での「山荘生活」がある。この行事は、入学したての新入生がクラスの仲間と友情を深める大切な行事だ。昨年は登校開始が6月だったため、秋にずらして日帰りで実施した。

昨年の学園祭「かもめ祭」はオンラインで開催。双方向での受験生相談会も実施した

生徒の自己肯定感を育てる環境を 学校が様々な取り組みでつくる

同校が、こうした学校行事を大切にしているのは、行事が仲間との信頼関係を育む大切な機会と考えているためだ。

「男子の場合は、縦の人間関係のなかで成長することが多いようですが、女子は『共感』をベースにした横の人間関係のなかで成長するといわれています。そのため、女子の主体性を伸ばすには、学校が安心できる居場所であることが大切。そのなかで育まれる自己肯定感があってこそ、間違いや失敗を恐れずに議論したり、新しい学びにチャレンジしたりできるのです」と大井先生は説明する。

さらに、同校では、早くから次のような方法で「仲間づくり」の取り組みを行っている。中1については、1クラス30人程度の少人数編成とし、3日ごとに席替えをすることで、クラス全員と偏りなくコミュニケーションが取れるように学校がサポートするのだ。中2・3になると、1クラスは40人程度に増えるが、3日ごとの席替えは変わらない。そのようにすることで、生徒一人ひとりが学校を自分の居場所と思うことができ、自己肯定感を育むことができる環境を整えている。

こうした取り組みの成果は、確実に生徒の成長につながっているようだ。大井先生が、同校の卒業生と在校生に共通する、あるエピソードを紹介してくれた。

「本校の卒業生に、IT分野のジェンダーギャップを埋めることをミッションとする一般社団法人を創設し、Forbes JAPAN誌の “世界を変える30歳未満30人の日本人” に選ばれた人がいます。先日、その人に鷗友学園での思い出を聞いたところ、『鷗友では意見を言うのが普通でした。お互いに意見を言い合って何かを作り上げていくことを大切にしていました』と言っていました。実は、それと同じようなことを現在の高3生も言っていたので、そうしたことが本校の校風として長く根付いていることを再確認しました。自分の思いを伝えられることは、自己肯定感につながることだと思います」

学びのすべてがそろった 「幕の内弁当」のような学校

近年、同校の中学入試における志願者数は増加傾向にあり、今春も多くの志願者を集めた。人気の理由は何か。「学校説明会時に実施するアンケートでは、何かに偏った教育をするのでなく、バランス良くすべてを行う教育方針が多くの保護者に共感を得ているようです」と大井先生は分析する。

また、そうした教育方針を伝えるため、同校が近年使っているのが、「幕の内弁当」のような学校という一風変わったキーワードだ。

「英語や数学などの教科学習だけでなく、運動会や学園祭などの学校行事、クラブ活動、校外学習、友人とのおしゃべりまで、いろいろなものが入っていて、そのどれもがおいしい。鷗友学園の学びは、そんな幕の内弁当に似ていると思い当たったのがきっかけです」(大井先生)

彩り豊かで学びの栄養バランスの良い幕の内弁当。それが鴎友学園での6年間といえそうだ。

鷗友学園の学びはいろいろなものが入っていて、そのどれもがおいしい幕の内弁当に似ている