WILLナビDUALアーカイブ 私立中高一貫校

生徒が自ら学ぼうとする環境を整え
社会で耀く女性を育成

国府台女子学院中学部・高等部

1926年の創立以来、国府台女子学院は「智慧」と「慈悲」という仏教の教えを基盤に、女子教育に取り組んできた。世の中が急速に変化し、女性に求められる力が大きく変わりつつある時代の女子教育を模索し、伝統の上に新たな時代の学びを積み上げている同校。平田史郎学院長に、同校の教育についてお話をうかがった。

先輩への憧れから生まれるモチベーションが

成長を促す女子ならではの教育環境

平田 史郎 学院長

「中学・高校は生徒が大きく変わっていく時期です。子どもから大人の女性へ。この “第二の誕生”とも言える重要な時期のお子様をお預かりする責任の重さを実感しつつ、本校はその子のこれからの人生を生きるための柱を身につけられる場所になりたいと思っています」

平田史郎学院長は、同校での6年間をこのように語る。

国府台女子学院は、平田学院長の祖父・平田華蔵が大正15年(1926年)に創立した学校だ。大正デモクラシーの風が吹き荒れ、女性の権利が声高に叫ばれ始めた時代。同校はいわゆる良妻賢母ではなく、「これからの日本発展の礎となる女性を育てる」ことを目標に創立され、一貫して独自の女子教育を実践してきた。

「教育はそれぞれの学校の考え方により個性的・多様性であるべきです。男子・女子と分ける教育は時代にあわないと思われるかもしれませんが、女子校だからこその教育がありますし、男子校・女子校・共学校と異なる教育の場で学んだ人間が集うことが、よりよい社会の実現につながると思います。日本の社会は男性中心、グローバルスタンダードにはほど遠い現状で、女性が活躍する土壌がまだまだできていません。大人の社会の縮図である子どもたちの社会にもその影響はあり、無意識に男子・女子の棲み分けができてしまっている。でも女子校ではすべての役割を女子だけでこなすため、自ら能動的に動く女性を育てられると自負しています」(平田学院長)

一般に女性は、男性と比べてコツコツ積み上げていく力や団結力が強いといわれる。同校では部活動や行事の大部分を中学部・高等部合同で行っており、中学1年生にとって高校3年生は“5年頑張れば、あんなふうになれるかも”というお手本になり、夢や憧れをモチベーションに成長していける。女子教育にはそんな良さもあるという。

仏教教育で心を、独自のカリキュラムで生きるためのスキルを育む

仏教精神を礎とした教育

国府台女子学院の大きな特徴に仏教教育がある。同校では、各学年週に1時間、仏教の教えを礎とした宗教教育を行っている。

「教育には大別して、方法論と意味論の2つのアプローチが必要だと考えており、この意味論にあたるのが仏教教育です。仏教では何にでも関心を持ち、より深く学ぼうとする心を『智慧』、友だちと共に喜び、悲しみをわかちあう心を『慈悲』といい、本校ではこの2つの心を兼ね備えるために、『敬虔・勤労・高雅』の3つの目標を定めています。仏教教育の目的は“心を育てること”です。スキルや教養だけでなく、『自分はどうあるべき人間なのか』『何になりたいのか』『そのために何をすべきか』など、繰り返し自問自答することで物事の本質をとらえ、智慧の目を育んでいきます」

一方、方法論にあたるのが、同校の教育システムだ。同校では中高一貫の学びを最大限に活かした独自のカリキュラムを構築している。中学の3年間は、正しい学習習慣を身につけ、基礎力を積み重ねる時間。中1では毎日の授業に向かう姿勢や学習習慣の基盤づくりと、挨拶や服装など、自立した女性になるための基本的な生活習慣の指導をていねいに行う。中2では興味・関心を持ったテーマについて、自ら調べ、深めるカリキュラムで課題解決能力を高めることを意識。中3になると、中2の成績をもとに選抜された選抜クラスと普通クラスに分かれ、習熟度に合わせた学習で、高等部進学に向けた応用力・実践力を高めていく。さらに高等部は普通クラスと選抜クラス、美術・デザインコースのある普通科と英語科からなり、普通クラスと選抜クラスは高2から進学理系コース、進学文系コース、選抜理系コース、選抜文系コースに移行して学んでいく。

「本校は『面倒見の良い』学校と評価していただいていますが、入学時点では平均的なレベルの子がほとんど。ただし皆“やればできる”力を持っており、それを引き出すのが本校の使命だと考えています。本校では課外講習や夏期講習、実力テストによる確かな学力の定着、それぞれの目標に対応した進路指導などを通して、全員が志望する大学に現役で合格できるよう、きめ細かく指導しています。教える教員側もスーパーマンがいるわけではありませんが、生徒と一緒に取り組もうとしており、そうした取り組みにより、生きるために必要なスキルを身につけることができると思います」

ちなみに2020年度の高校卒業生の現役進学率は91.3%。うち四年制大学進学者は88.5%で、難関大学にも多数の現役合格者を輩出。千葉県下の公私立高校の中でも群を抜く実力を示している。

報告型学習レポートの作成を目標として導入された「新聞を読もう」の授業(中3)

明るく開放的な図書館で主体的な学びを実践

同校が力を入れているのは、教えるのではなく生徒が進んで学ぼうとする環境。その象徴ともいえるのが図書館だ。2011年に竣工した新校舎の中心にある図書館は、明るい空間に蔵書約5万3700冊が並ぶ。理系と文系に分けて書籍を集めた調べ学習スペースや自習室もあり、『情報リテラシー』の授業などでも活用されている。

「新学習指導要領でも自ら調べ、解決する力の育成が重要視されていますが、それには言葉の力が欠かせません。そして言葉に対する能力の低下を克服するために必要なのが、世代を超えた人との会話と読書です。新しい図書館を作る際に専門家に相談したところ、出てきたのが『本屋さんにしましょう』というアドバイスでした。登下校時に生徒が必ず通る場所に図書館を設置、低い書棚を配置して本を手に取りやすくしたり、入り口をガラス張りにして中の様子がよく見えるようにしたり。図書館を身近な場所として感じてもらうことで利用をうながし、学習に活用してもらうことを意識しました」

この図書館ができた1年目には、1年間で293冊借りた子が現れ、翌年には342冊という生徒も。その後も毎年200冊以上本を借りていく生徒が複数存在するほど、生徒たちは自主的に図書館を訪れ、本に接しているという。

「先の読めない時代だからこそ、変わることのない仏教の教えを柱に、しっかりと自らを確立し社会で活躍できる女性になってほしい。本校は子どもたち自身の未来を切り拓く力を育み、夢の実現に向けて精一杯サポートします」

生徒一人ひとりに優しい目が向けられている学校。同校のキャンパスからは、そんな温かさが感じられた。

2011年に竣工した図書館。豊富な書籍と広く明るい空間が創造力と学習意欲を育む