アクティブラーニングに個人所有の端末を活用
難関大学への合格実績の伸びで注目されている鷗友学園だが、以前から何よりも重視してきたのが「能動的な学び」だ。生徒自身が仮説を立てて検証したり、グループでテーマを設定して実験に取り組んだり、ディスカッションやプレゼンテーションの機会を数多く設けたりなど、生徒が主体的に学ぶアクティブラーニングが豊富だ。それが結果として合格実績を伸ばす原動力になっている。
アクティブラーニングをより効果的に進めるツールとして活用されているのがICT。すでに全教室にプロジェクターを設置し、学内のWi-Fi化も実現。各教員はiPadを授業で活用している。
さらに、今年4月からスタートしたのがBYOD(Bring Your Own Device)だ。今年度はまず高1の生徒を対象にスタートさせ、徐々に広げていく予定だ。
BYODとは、従来、生徒が授業で使う端末はパソコン室などから借りてきたものに限られていたが、その制約をはずして、生徒一人ひとりが個人所有する端末を使えるようにするというものだ。使い慣れた端末を活用することで、学びの質の向上が期待できる。
授業時間に限らず、生徒同士で意見を伝え合う機会が増え、学びの双方向性も高まる。その中で、社会で不可欠な情報リテラシーが身についていく。ただし、ICTはあくまで学びのツールであり、最大の目的は授業の質を高めることにあると、同校では強調している。
なお、従来は禁止にしていたスマートフォンなどが学内で自由に使えることによって生じる問題点を生徒会が中心となって全校生徒に発信することも行っている。
キーコンピテンシーに対応した評価法「ルーブリック」
アクティブラーニングを進める上で大きな課題になっているのが、成績評価である。アクティブラーニングで育成をめざすのは思考力、表現力、主体性などのキーコンピテンシーだ。社会に出てからも必要になる重要な能力だが、一般的なテストで客観的に評価するのはなかなか難しい面があるのだ。
この課題を解決するために、鷗友学園では「ルーブリック」という新しい評価法を導入している。もともとはアメリカの大学で始まったもので、学習などの達成度を判断する基準を、数段階に分けて示した評価法だ。近年、日本の大学でも導入が相次いでいる。
ルーブリックの評価表には、左端に評価項目が縦に並び、それぞれの項目について、5~6段階の評価基準ごとに何ができるようになればこのレベルに相当するか、具体的に記述されている。評価表は教科ごとに作成されており、たとえば国語科なら「語彙力」「知識獲得力」「読書力」など、理科なら「科学的思考力」「実験における倫理」「主体的な取り組み」などの評価項目が掲げられている。
これらの評価項目は、各教科の教員が議論を重ねて設定したキーコンピテンシーに対応している。つまり、中高6年間で、それぞれの教科において、どんな力を身につけさせたいのか。各教科のカリキュラムポリシーが明確に示されているわけである。このルーブリックは、全生徒に配布され、各教科の授業では、その内容を踏まえた振り返りも行われている。
生徒は、現在の自分のレベルを客観的に把握するとともに、今後、自分は何をどのように努力すればいいのかを理解することができる。振り返りを通して、自分なりの成長が実感できることが、自己肯定感の高まりにもつながるに違いない。