「基礎学力」を徹底して「洞察力」を磨く
明治大学直系の付属校として、1912年に神田駿河台に誕生した明治大学付属明治高等学校・明治中学校が調布市に移転し、男女共学に移行したのは2008年。新たな教育体制が整い、中学校から大学までつながる中・高・大の10年一貫教育の充実と飛躍をめざしている。
「校訓である『質実剛健』と『独立自治』、そして、鵜澤聡明・初代校長が残した『第一級の人物たれ』という教えを、折に触れて生徒たちに伝えています」と安蔵先生。この言葉の背景には、日本を背負って立つリーダーを育てるために、少数英才教育に取り組んだ創立時の精神が込められている。「第一級の人物であるためには、勉強だけでなく、立ち居振る舞い、人間性にも優れていなければならない。そんな思いで全人的な教育に取り組んでいます」と続ける。
同校の特色ある一貫教育の柱の一つが「基礎学力の徹底」だ。中・高ともに週6日制として十分な授業時間を確保したうえで、中学では各学年とも英語に週7時間を費やすほか、さらに週1回、英・数の補習講座を7時限目に設定。英検や漢検などの民間検定試験にも積極的にチャレンジさせるなど、生徒たちの学力向上に取り組んでいる。
一方、教科指導では、知識の量を競ったり、問題を速く解いたりするといった単純な学力ではなく、今何が問われているのかを考える力、自分が向き合う事象のなかから問題点を見抜く力など、「洞察力」の養成を重視。また、図書館などを活用した「言語活動」を行うなど、みずから調べ、文章にまとめて発表する能力を伸ばすための指導を展開している。
「友人との競争は必要なし」毎年9割以上が明治大学に進学
進学に関しては、希望すれば全員が推薦で明治大学に進学できるので、「友人との競争は必要ありません」と安藏先生は言う。しかし、推薦されるためには、高校3年間の成績総点の60%以上、英検2級、TOEIC450点以上という条件を満たす必要がある。これに加えて、人物・適性・志望理由が考慮され、結果として毎年9割以上の生徒が明治大学に進学している。
さらに、全員が希望学部に進むためには、「みんなで教え合い、磨き合う」ことが大切となる。たとえば、授業では積極的に挙手し、わからないところは先生に質問し、共に考え、意見もぶつけ合いながら、互いに理解し合う姿勢が求められる。これは中学から高校に進学する際も同じで、共に教え合い、高め合いながら、英検準2級の1次試験合格などのハードルをクリアしなければならない。
「推薦基準に英検やTOEICを加えたのは2013年度からですが、最初は『なぜ、英語ばかりに力を入れるのか』という声もありました。しかし、実際に行ってみると、英語学習を通じて勉強習慣が身につくので、他科目の成績にも好影響が出ています」(安藏先生)
高大連携による多彩な教育、きめ細かい進路指導を展開
付属校としての強みを最大限に生かせる高大連携の取り組みについては、明治大学全学部の教員が高校生を直接指導する「高大連携講座」のほか、簿記や法律、語学、理科実験などについて専門性の高い内容で学ぶ長期休暇中の集中講座、大学の授業を先取りする「プレカレッジプログラム」などを実施。これらをきっかけに、司法試験や公認会計士試験などの難関国家試験の合格につながった卒業生も少なくない。
明治大学政治経済学部の教授も務める安蔵先生は、「卒業生は大学に進んでからも熱心に勉強しているようで、明治大学の成績優秀者表彰『学部長奨励賞』の受賞者の2割以上が本校の卒業生。付属校特有の“ゆとり”を享受しつつ、勉強のモチベーションも維持できます。赤点さえ取らなければ、順位にとらわれずに自由に学べるという、大らかな校風。これこそが明治らしさだと思っています」と話す。
「洞察力・社会力・実践力・精神力」4つの力を育む
部活や学校行事を重視している点も同校の特徴だ。大学入試にとらわれる必要がないので、同校の部活加入率は97%と高い。体育祭、文化祭はもちろん、各学年の旅行行事も生徒みずから企画を立てて実行するなど、部活や学校行事は、学年を超えて役割分担や協働を経験できる、人格陶冶のよい機会となっている。教員と生徒の距離も極めて近いため、生徒一人ひとりの個性を見極めながら、ほどよい距離感でのサポートが行われている。
「質実剛健」「独立自治」の建学精神に基づく伸びやかな校風と、充実した高大連携の取り組み、そして共学化によって男女が共に協力し、切磋琢磨し合う環境。そのなかで、生徒たちは明治大学の核となる「洞察力・社会力・実践力・精神力」の4つの力を育み、将来の夢に向かって力強くはばたこうとしている。
最後に、安蔵先生は、「本校では、ゆっくり、愛情を込めて、ていねいに生徒たちを育てています。付属校ならではの充実した6年間を、明大明治で楽しんでください」とメッセージを送った。